たまには毛色の変わった話ということで(笑)。
小さい子をお持ちのお父さん、お母さんが子どもの頃に、BCG接種に先立ってツベルクリン反応という検査をやっていました。「聞いたことがある」って方も多いと思います。
ツベルクリン反応は、結核かどうかを見極める検査です。つまり、ツベルクリン反応が陽性なら、既に結核にかかっているということで、結核の予防接種を受ける必要がない訳です。
結核にかかっていない人をツベルクリン反応で拾い上げ、結核の予防接種につなげていたということです。
ところが、だいぶ以前の話ですが、ツベルクリン反応が廃止されました。ということは、結核を見つける検査がなくなったことを意味します。それは困ることです。
今では、ツベルクリン反応を行わずに、どの赤ちゃんにもボンとBCGを接種します。
ということは、結核が見つからなくなった訳ですが、「安心してください。穿いてますよ」(笑)。その代わりとして、「コッホ現象」があります。
結核にかかっていない人にBCGを接種すると、1か月程して接種部位がジクジクしてくるのですが、結核にかかっている人に接種すると、数日で赤く腫れたり、膿んできたりするのです。
この「コッホ現象」さえ知っていれば、ツベルクリン反応は行わなくてもいいという判断で、廃止されたのだと理解しています。結核を見つける大事な検査がなくなっても、大丈夫ということになります。
当院の予防接種の時間にBCG接種も行っていますが、正直ひとりひとりにコッホ現象の説明をするのは面倒だったりします。けれど、子どもは結核になることは極めて少ないですが、高齢者は減っていないと言います。周囲の大人からもらっている可能性もゼロではありません。親御さんへの責任と思って、ツベルクリン反応がなくなった経緯なども含めて、説明しています。
少し前ですが、3人のお子さんをお持ちの親御さんの3番目のお子さんにBCG接種をやろうとした際のこと、コッホ現象の話をしたら「初めて聞いた」と言われました。ちなみに1番目、2番目のお子さんは当院では接種していません。
私は面倒だなと思うことはあっても、コッホ現象の説明をしなかったことは一度たりともありません。こんな大事なことを端折ってしまう医者っているんですね。意外と少なくないようです。
普段から開業医のモラルの低下を指摘しています。世の中には「自分ファースト」、「利益ファースト」の医者はかなり多くなっています。やるべきこともせずに「ハイ、お金ください」なんて意地汚い医者もいたものです。患者軽視も甚だしい。
ぜんそくを“風邪”、アトピー性皮膚炎を“乳児湿疹”と決めつけ、効果のない薬を出し続ける医者は、BCG接種に先立ってコッホ現象の説明をしない医師と相関すると思っています。つまり、面倒なことはせず、一人当たりの時間をできるだけ短くというのを優先する医者です。
あなたのかかりつけ医は大丈夫でしょうか?。