食物アレルギーは、アトピー性皮膚炎の湿疹から食べ物が入ることで起こるとされます。
しかも、重症であれば、体の広くに湿疹があることになり、それだけ広範囲から、いろいろな食べ物が入りやすいことになるので、多品目に食物アレルギーが発生しやすいのだろうと思います。
10年以上前のことですが、母が入院することになり、その間、赤ちゃんのアトピー性皮膚炎治療が行われずに、一気に悪化したというケースに遭遇しました。当時は勤務医でしたので、入院してもらい、治療を行いました。
結構短期で改善させたつもりですが、食物アレルギーは卵6、ミルク6、小麦5、大豆6、ゴマ4、ピーナッツ5、エビ4、ソバ3などとなってしまいました。いろんなものを除去せざるを得ない状況でした。
当時に戻れるものなら、早期に湿疹の治療を十分に行うことができれば、また違った経過になっていただろうと思います。今でもそう強く思っています。これは多くの食物アレルギーを発症したお子さんを持つ親御さんの共通の思いだろうと思います。
現在では、こうならせないように治療に取り組んでいるつもりです。
この春、重症なアトピー性皮膚炎の赤ちゃんが当院を受診されました。その10年前のケースを彷彿とさせるような患者さんでした。
アトピー性皮膚炎は重症だと入院加療が望ましいのですが、入院加療を任せられる施設もなかったため、外来治療をせざるを得ませんでした。全身の皮膚の状態が悪く、そこからタンパク質が漏れ出て、低タンパク血症になっていました。
まあ、何とか状態を改善させ、恐る恐るアレルギー採血を行いました。卵3、小麦2、大豆2でした。
皮膚の状態がかなり悪い状態で受診されましたので、既に「経皮感作」を許した状況でした。これ以上悪化させまいと、お母さんとともに必死に皮膚治療に専念しました。
つい先日、アレルギー採血を再検してみました。卵はクラス2と少し低下していました。小麦と大豆は0になっていました。(ちょうど今日が1歳ですね。お誕生日、おめでとう!。)
卵も、少量の卵を負荷試験という形で食べさせており、今のところ、10年前の苦い経験は繰り返すことはなさそうに思います。
ふと考えると、当院で診ている低年齢のお子さんは、ほとんど何かしら食べさせていますし、皮膚の状態が悪いお子さんはほとんどいません。
時代の進歩を感じるとともに、同じ過ちを繰り返さないように、ちょっと頑張っている自分がいるのだろうと思っています(笑)。