10年前、アレルギーで勝負しようと開業医の道を選びました。
勤務医でもアレルギーは専門的にやれますが、開業した方が毎日アレルギー児とかかわることができます。大きく言えば、自分の知識や技術をアレルギーで困っている子ども達に捧げたいと思っての船出でした。
多くの小児科医が“風邪”と診断していても、実はぜんそくが隠れていたりします。それを見つけるのが、当初の仕事の中心でした。
食物負荷試験もやっていましたが、開院した頃は、今ほど多くは実施していませんでした。市内はもちろんのこと、市外からも負荷試験目的の受診が増えるにつれ、件数も多くなっていきました。
最初は卵、牛乳、小麦という3大アレルゲンが中心でしたが、徐々にエビやタコ、ピーナッツ、ソバと一般的には治りづらいとされるアレルゲンにも対応していきました。食物アレルギーのガイドラインには、負荷すべき量の記載がないものまで、負荷試験をやっていました。
更に、卵や乳は、専門医でもアレルギー検査が数値が高いと「負荷試験どころではない」と言われたりしますが、アレルゲンの含まれる量が少なければ食べることができますので、クラス5や6でも食べさせるようにしてきました。
昨年出た食物アレルギーのガイドラインで、重症者には少ない量で負荷試験を勧めるようになりました。当院は、ずっと前からそういう対応をしており、関心のある分野をこだわって頑張っていると、ガイドラインよりも一歩先の診療ができるものだと思っています。
ガイドラインは、有名な論文などを根拠に正しいと思われることを推奨しています。そういう意味では、“最新”とは限らない訳です。
ただ、アレルギーのように日進月歩だからこそ、こういうことができるのだろうと思っています。食物アレルギーが皮膚から入って作られることなんて、以前は誰も考えていなかったことですから。
今では、なるべく早くから少量ずつ食べさせるというところまで進化しています。専門医でもこの進化に追いついていけずに、一部の先進的なことをやっている専門医のみやっていることだろうと思います。
そして、今は早期から食べさせるだけでは不十分で、皮膚をキレイにしなければなりません。食べ物の入る皮膚を治療して、ブロックしてあげなければいけないのです。
今の私の最大の関心事は、アトピー性皮膚炎をいかに治療し、皮膚の状態を高値安定させるかということです。食物アレルギーの専門医といっても、皮膚の治療の下手な医師は大勢います。
というか、アトピー性皮膚炎の治療自体も小児科医と皮膚科医のいうことは少し異なっていますし、医師同士でもやり方に大きな差があります。どの患者さんも、速やかにアトピー性皮膚炎を落ち着かせる方法が明確にはなっていないのです。
私は、それに取り組んでいます。これも学会よりも一歩先へ行っていることだと思っています。