小児科 すこやかアレルギークリニック

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薬がない!?
2017年10月28日 更新

「起立性調節障害」という病気があります。

読んで字のごとく、起き上がろうとすると、血圧を調節できないというもので、思春期の成長期のお子さんが、朝なかなか起きられず、ふらつきを感じたりする病気です。不登校と間違われたりすることもありますが、小児科医なら時々みる病気だと思います。

治療は、床の中で血圧を上げる薬を飲めば、徐々に血圧も上がってきて、ふらつきがなくなるようになります。

当院は、市外から受診されるアレルギーの患者さんも多く、風邪や他の病気は地元の医者で診てもらい、アレルギーは定期的に通院されているという方も結構いらっしゃいます。

ある思春期の患者さんが、地元で起立性調節障害の治療を受けていました。去年だったかな、当院でも治療した患者さんがおり、標準的な治療で劇的に改善したということがありました。

ただ、その患者さんは、同様の治療を受けていても、何ら改善がなかったそうです。勤務医時代のことですが、こういうケースに、以前お勧めされていた「ジヒデルゴット」という薬を使って効果的だった経験がありました。

他院で別の病気を診られている場合、改善していないケースでは、私の知識が役に立ってくれればと思っており、介入することがあります。

この患者さんも、先の薬を試してみたらどうかと考えました。処方しようとしたら、電子カルテの薬の欄に「ジヒデルゴット」が出てこないのです。

これは片頭痛にも用いられることのあるメジャーな薬なので、私自身何が何だか分かりませんでした。隣の薬局に聞いてみると、ないような話ですが、少し古い診察室に置いてある薬の本には、しっかり書いてあります。

薬局で詳しく調べてもらうと、ないのだそうです。患者さんには期待させてしまったかもしれませんが、薬自体がなくなった話をさせていただきました。

自宅でネットで調べてみました。別の病気を発生させるリスクがあることから、販売が中止になっていました(汗)。処方できたのは、今年の3月までだったようです。

ジヒデルゴットを日頃から処方していたであろう神経内科や脳外科の先生や、起立性調節障害の診療をしていた小児科の先生は、販売が中止になったことはご存知だったのでしょうが、私のようにごくたまにしか処方しなかった医師は、知る由もないということでしょう。

医療の世界は、この薬が製造中止になりますよというアナウンスがいちいちある訳ではありません。以前、この場で触れたと思いますが、小児科医がよく遭遇する夜尿症のガイドラインが昨年発刊されましたが、それも連絡があった訳ではなく、私もたまたま調べて知ったということでした。

常にアンテナをはり巡らせていないと、新しい情報が得られないのです。

最近、アトピー性皮膚炎の「経皮感作」や卵を早期から食べさせた方が卵アレルギーの発症予防ができるということを書いていますが、多くの医師にとって、私のジヒデルゴットの販売中止を知らなかったのと同じ状態なのでしょうね。

日頃から遭遇する病気のことは、知っておいてもらわないと困るんですが…。