日本の制度はおかしいと日頃から言っています。
開業医への報酬は「質より量」によって決まるので、いかに大勢を診るかがポイントで、それによって年収は大きく変わってきます。
ですから、時間をかけない、良心的でない“医療”がまかり通り、誤診されたり、改善のない薬が続けて処方されたり、専門医に紹介しないという最低・最悪の診療が全国各地で繰り返されています。
先日、ある患者さんが来られました。もともと食物アレルギーで当院で診ていたのですが、咳が長引いて地元で治療しても改善しないため、困り果てて100数十キロの距離をかけて受診されたという訳です。
咳が長引けば、ぜんそくが見逃されていることが多いのですが、今回は「ぜんそくと診断されました」のだそうです。
誰が診断したかというのも問題ですが、耳鼻科医なんだそうです。これを聞いて、私は嫌な予感がしました。だって耳鼻科は耳鼻咽喉科の略です。耳、鼻、咽頭、喉頭が専門です。つまり、のど仏より「上」が詳しいのであって、ぜんそくはその「下」の気管支に病変があるからです。
要するに、専門外であるぜんそくを治療できるのだろうか?という悪い予感が脳裏をよぎったのです。
お薬手帳を見ると、6歳の年齢にキプレス、フルタイド、セレベント、アスベリン等が処方されていました。これをみて、おかしいと感じる医師は少ないと思うと思います。おかしいと感じて欲しいのですが…。
問診した上では、とても重度の症状を繰り返してはいません。にもかかわらず、最重症のぜんそくの患者さんへの治療がなされていました。あと、専門医はアスベリンという咳止めは使わないと思います。
少しは勉強したのでしょうが、ぜんそくの治療の薬をアレもコレも加えているだけであって、どうしたら症状を抑えられるかということを考えていない気がします。この子は、これだけの治療をする必要はないでしょうから。
あと、専門医に紹介するレベルです。耳鼻科医の領域をとっくに超えています。お母さんによれば、「地元では人気の耳鼻科なんです」ということです。
多少の努力は認めますが、「良医」ではないですね。自分がどこまでできて、どこからできないという医師が持つべき領分を分かっていませんから。
私は、この子を改善させるポイントは「鼻」だと思っています。鼻がひどいのに、鼻の治療はほとんど行われていませんでした。耳鼻科医のくせにです。「木を見て森を見ず」って感じでしょうか?。地域では人気だというこの医師も、残念ながら信用できませんね。
そうそう、そういう医師ってどこの地元にいるかもしれませんが、人気があるからレベルの高いことをやっているとは限りませんからね。医師の世界って、そんなものです。