小児科 すこやかアレルギークリニック

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あるのか、ないのか
2017年12月05日 更新

食物アレルギーの分野で、今年最も注目された研究は「プチスタディ」でしょう。

「プチスタディ」とは、成育医療研究センターが発表し、超有名な医学雑誌に採用された卵アレルギー発症予防に関する研究です。これを元に、小児アレルギー学会が卵アレルギー発症予防の提言を行いましたので、ご存知の方もいらっしゃることでしょう。

もう一度、整理しておきましょう。生後4、5か月のアトピー性皮膚炎と診断できる赤ちゃんは、湿疹部分から卵が入ると卵アレルギーを発症しやすくなります。まず、皮膚をビシッと治療し、それ以上卵などが入らないようにしておきます。

その上で、生後6か月になったら卵を少量連日摂取させて、1歳の時点で卵1/2個を食べられるかどうか負荷試験を行うというものです。6か月から少量食べていた群と、食べていなかった群を比較しており、結果は食べていた方が、食べていなかった群に比べて、8割少なかったというものです。

「へー、なるほど」って思ってしまいますが、卵アレルギーが治すことができたのでしょうか?。そうという訳ではなく、これは「発症予防」をしているのです。

ちょっとややこしいでしょうか?。もし治したことを証明したいのなら、生後6か月の時点で卵1/2個で負荷試験をやる必要があると考えています。何故なら、卵アレルギーの定義は、卵を食べてアレルギー症状を引き起こす病気ですから。

「プチスタディ」では、生後6か月の時点で負荷試験はしていませんので、治ったかどうかをみている研究ではないんですね。私の記憶では、生後6か月の時点で、卵の値がクラス0から高いと一部はクラス5だったと言います。

特に数値の高い人に、生後6か月から1/2個もの卵を与えると、一部は何ともないでしょうが、強いアレルギー症状、つまりアナフィラキシーを起こす患者さんもいると思います。

ですから、生後1歳の時点で卵1/2個の負荷試験をやった際に、卵アレルギーではなかった人は、引き続き食べてもの何ともなかったろうし、一部はいわゆる「経口免疫療法」という操作により治ってしまったものと思われます。

また、生後6か月の時点で卵を食べても何ともなくても、例えば8か月とか10か月の時に卵を食べさせて、症状の出る人もいると思うのです。遅れて、症状の出る人と言えばいいでしょうか。逆に、6か月の時に症状は出たけれど、自然に治ってしまう人もあるかもしれません。

こう書いてみると、ややこしくなって、かえって混乱させてしまうケースもあるかもしれません。食物アレルギーがあるのか、ないのかって判断がすごく難しいと思いませんか?。移ろいやすいものというか、とらえづらいものって感じかもしれません。