小児科 すこやかアレルギークリニック

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広まらないのは
2017年12月19日 更新

昨日、カルピスを使い、重症な牛乳アレルギーのお子さんに負荷試験を行いました。

牛乳1mlも摂れないであろう患者さんなので、牛乳そのものよりも別のものを使わないといけないと考えたのです。

数ml摂ったところでアレルギー症状が誘発されてしまい、牛乳に換算すると0.17mlということになります。とても重症であることがご理解いただけると思います。

卵についても、卵クッキーを使っています。極めて少ない量から食べさせ、合計で3枚食べたところで終了しています。クッキーに小麦が含まれるため、小麦アレルギーさえなければ、使える作戦です。

現在の食物アレルギーの考え方は、卵や乳を多く摂ると症状が出ても、症状が出ないような少ない量を摂り続けることで、もっと食べられるようにするという治療が推奨されています。

当院では、卵も乳もクッキーやビスケットを使い、食べさせるようにしています。冒頭の患者さんは乳ビスケットが使えない程の重症なので、薄いカルピスを用いることで、どれくらい摂れるのかを調べるための負荷試験でした。

クッキーやビスケットは小麦と一緒に焼くことで、アレルギーを起こしにくくする効果が期待でき、負荷試験に使いやすいと考えています。クッキーやビスケットに含まれる卵や乳の量を把握していますので、食べられた卵や乳を何mg以内で食べていけば、安全に食べ慣れさせることが可能となります。

そのことを学会でも繰り返し発表してきました。極めて重症なケース以外はほぼ対応できると思っています。しかも、クッキーやビスケット何枚を食べることは、十分「おやつ」になりますので、ある意味、とても実用的な治療ということだと考えます。

ところが、学会は加工品による負荷試験を認めたくないようで、卵は卵料理、乳は牛乳そのもので負荷試験しなさいと言っています。確かに、小麦と抱き合わせることで、「閾値」といってどれくらい食べられるかどうかという量は多少は変わってくることでしょう。

しかし、超重症だと、卵クッキーや乳ビスケットさえ食べることができないし、食べられる加工品も量が少ないことになります。現実的には「閾値」が多少ズレても問題ないと考えます。

学会は「閾値」にこだわりますが、負荷試験をやることで「閾値」が正確に分かるとは限らないし、「閾値」は体調や運動で大幅に変わるものだと認識しています。逆に、マイルドな加工品を使うことのメリットが大きいように考えています。

ガイドラインでは、そのものを使った負荷試験を勧めることに異論はありません。ただ、軽い負荷試験をやりたいと思っている開業医には、やや荷が重いんじゃないかと思っています。ですから、開業医用の負荷試験のガイドラインなんてあったらいいんじゃないかと思っています。

第一人者は、開業医は診療で忙しいだろうから、専門医に紹介してくださいと繰り返していますが、なかなか紹介なんてできないものです。負荷試験が広まらないのは、学会のそういう頑な姿勢が原因している部分もあるんじゃないかと思っています。