小児科 すこやかアレルギークリニック

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疑念
2017年12月21日 更新

5年前の昨日、東京調布市で食物アレルギーのお子さんが給食に出たチーズ入りのチヂミを食べ、亡くなるといういたましい事故がありました。

この5年で食物アレルギーを取り巻く環境はだいぶ変わってきたように思います。全国各地で園や学校関係者を対象としたエピペンの研修が開催されています。

それ以前は、日本の第一人者もエピペンは「迷ったら打て」と分かったような分からないようなことを言っていましたが、小児アレルギー学会が具体的な13項目を挙げて対応しやすくしたり、お膝元の東京都が食物アレルギーの緊急時対応マニュアルを作ったりしています。

これも調布の事故があってからのことなので、患者さんの死を絶対に無駄にしてはいけないし、実際そういう風に進んでいるように実感できます。これも大事なことですが、新潟県ではそうでもないですが、全国的には食物アレルギーに力を入れる小児科医も増えてきています。

今年の6月に小児アレルギー学会が鶏卵アレルギー発症予防の関する提言を公表しました。もう食物アレルギーは、“食べて治す”から“予防”へ舵を切ったことになります。

そんな中、11月に神奈川の専門病院で経口免疫療法中に呼吸停止し、重篤な後遺症を残してしまった事例が発表されました。案の定、ネット上ではいろいろ話題になっているようです。つい先日、こんな記事を見つけました。
https://news.infoseek.co.jp/article/sankein_prm1712190005/

「食べて治すアレルギー」に疑念と書かれていますが、若干混乱しているようです。神奈川の事例は、超重症な牛乳アレルギーに対し、免疫療法を行い、かなりの効果を挙げていました。ぜんそく発作を起こして間もない頃に牛乳を飲んだら、呼吸停止を起こしてしまいました。

体調の悪い時は、飲ませないということになっていたのでしょうが、明確な基準もなく、研究段階の治療のため、こういう事故が起きてしまったと認識しています。

このように言い方はちょっと悪いのですが、“できあがってしまった”「超」のつく程の重症な食物アレルギーは治りづらく、とても厄介です。

その一方で、乳児に対して、皮膚治療をした上で、卵を少量摂らせていくと、卵アレルギーを8割減らすことができたというメイドインジャパンの研究結果が出ました。赤ちゃんに卵というアレルゲンを食べさせていくのですが、危険な症状は誰にも起きなかったそうです。

いまだに専門医であっても、乳児で卵の値が陽性だと除去を指示する医師が多いようですが、除去を続けるとかえって卵アレルギーを悪化させる恐れがあり、その風潮に一矢報いるべく、小児アレルギー学会が発症予防の提言を出したものと思われます。

神奈川の事故とは、次元が違っており、重症な食物アレルギーを作らず、予防していくための方法を提言してくれているのです。それを混同されてしまうと困ってしまいます。

記事にも出てきている高須院長は食物アレルギーはご専門ではないため、どこまで把握されているのか分かりませんが、「素人がやるもんじゃない」と言うのは正しいと思います。

ちゃんと分かって経験のある専門医のもとで試すべき治療ですが、とにかく食物アレルギーにさせたくない親御さんは多いでしょうが、それにまともに応対してくれるアレルギー専門医はほとんどいないという現状があります。私の周りでは見かけませんが、何とかしたいと思うあまり、素人が手掛けてしまうようなケースもあるのかもしれません。

神奈川の事例が、食物アレルギーの発症予防などにネガティブな影響を大きく及ぼさないことを希望しています。