小児科 すこやかアレルギークリニック

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混乱した1年
2017年12月27日 更新

2017年も終わろうとしています。当院も今日も含め、あと2日の診療となりました。

食物アレルギーの世界で一番大きな出来事は、先月発表された神奈川県の専門病院で重症な牛乳アレルギーのお子さんが重篤な後遺症を残してしまったということだろうと思います。

これを受け、全国の専門施設に重篤なアレルギー反応の有無を調査したところ、何人もそういった事例があることが判明しました。誤食で後遺症を残したケースもあったようですが、負荷試験や免疫療法中の事故もあったと言います。

これを受け、学会側は開業医には治療は無理だと言います。確かに夜だったり、週末だったり、開業医がやっていない時間帯にアレルギー症状が出た時に対応しきれないのは事実だと思います。

ただ、重篤なアレルギー症状を起こしたのは、施設名が公表されていませんが、きっと名の通った専門病院も含まれると思います。ですから、専門病院なら安全に負荷試験や免疫療法ができるかと言えば、ノーな部分もあろうかと思います。

実際、今年はもうひとつショッキングな事例が報告されました。アメリカのこども病院で負荷試験をした患者さんが亡くなるという事故が起きたのです。要は、24時間対応が可能な専門病院だから安全とは言えないことが明らかになったのです。

学会側は、相変わらず開業医が食物アレルギーへ関与することに否定的です。確かに驚くほどいい加減なことをやる開業医は存在します。しかし、開業医の方が入院施設も持たないし、絶対に失敗できない訳です。

もしかしたら、専門病院の医師よりも、いかに患者さんを危険な目に遭わせることなく食べさせるかということに神経をとがらせており、安全に負荷試験という課題に取り組んでいるのだろうと思っています。

食物アレルギーは、治りやすい軽症から、微量でアナフィラキシーを起こす重症な患者さんまでいます。軽症を開業医に、重症を専門病院というすみ分けはありだと思いますし、学会側の一律に開業医は…という考えは止めていただきたいと思っています。

ただし、軽症、重症の線引きはそんなに簡単ではないと思っています。軽症と思っていたのに生卵を食べたり、牛乳を多く飲んでしまったりすれば、アナフィラキシーショックを起こし得ます。軽症の診断が一転、「この子は重症だ」という評価に変わってしまいます。

経口免疫療法を開業医はやってはいけないと言っても、自宅で食べさせていく「食事指導」との線引きも学会側は明確に示せていません。ですから、学会側も開業医を規制するなら、もっと安全な方法を示すべきでしょうし、様々な疑問を明確にすべきでしょう。

2017年、今年も食物アレルギーは混乱した1年だったと思っています。