医者は、診療することで患者さんから学ばせていただいています。
それを実感させていただいたケースを紹介したいと思います。
最近、この場で「経皮感作」のことを繰り返し書いています。食物アレルギーでお困りの患者さんは多いですが、いまや予防できる時代になってきました。
昨年7月に、当時生後8か月の赤ちゃんが湿疹がひどいため、当院を初診されています。
まずは、添付画像をご覧ください。左端は採血項目で、昨年の7月と12月に2回検査させていただいています。
7月の初診時には、既に卵白、オボムコイド(加熱した卵)、ミルク、小麦、大豆、ω-5グリアジン(小麦アレルギーを詳しくみる項目)が陽性になっています。また昨日も触れた、アトピー性皮膚炎の病気の勢いを表すTARCという項目も1281となっています。
TARCは生後6か月以上では、正常値が1367以下されますが、「ああ、正常なんだ」と思ってはいけないと思います。
この赤ちゃんは、湿疹が出始めたのは生後1か月前で、湿疹もひどかったと言います。つまり、半年間も湿疹があり、経皮感作も十分受けていたからこそ、卵や乳など様々な項目が陽性になっているのだろうと思います。
アトピー性皮膚炎は生後6か月を過ぎると、落ち着いてくることも多く、以前は高かったTARCがやや落ち着いてきた頃の値が1281ということなのだろうと考えています。
まだ0歳ですし、多くの医師が、卵も乳もあれもこれも除去と指示するだろうと思いますが、当院では卵と乳などは既に少量の負荷試験は実施していました。
アトピー性皮膚炎の治療を7月から開始し、昨年12月(1歳1か月時)に検査を再検させていただいております。
結果を見ると、卵白、オボムコイド、ミルク、大豆はどれもストンと低下しており、小麦とω-5グリアジンは0になっています。肝腎のTARCは少し高いですが、863まで低下しています。やはり、先回の1281というのは、やや高い値でした。
卵も乳も完全除去にはしておらず、負荷試験で確認できた食べられる量は、食べるようにしておりました。それで低下している部分はあるのかもしれませんが、アトピー性皮膚炎の湿疹をキチンと治療すると、TARCも卵白やミルクの値も低下するのです。
最近はアトピー性皮膚炎が元になり、食物アレルギーを発症することが分かってきましたが、アトピー性皮膚炎の湿疹を治療すれば、食物アレルギーも軽快してくるということを理解していただきたいと思っています。
「百聞は一見に如かず」です。
アトピー性皮膚炎の診断もできず、“乳児湿疹”などと言っている小児科医、皮膚科医は、アトピー性皮膚炎の湿疹の治療が上手にできていないため、“食物アレルギーにも悪いことをしている”ということもご理解いただければと思います。
つまり、乳児期の食物アレルギーが悪化しやすい時期には、専門医にかかって欲しいということです。
