私が医者になった25年ほど前は、「ゼーゼー」を聞く機会が多かったです。
「ゼーゼー」というのは、もちろんぜんそく発作のことを意味しています。当時は、ぜんそく患者は多かったけれど、ガイドラインというものも存在しませんでした。
懐かしい感じもしますが、「テオドール」という気管支を広げる治療薬が主体で、現在は治療のメインを占めているフルタイド、パルミコートという吸入ステロイドはなるべく使わないという医者が多い時代でした。
最近、アトピー性皮膚炎の治療について触れることも多いと思いますが、アトピーのただでさえぶり返しやすい皮膚を、ステロイド軟膏をキッチリ塗ることで、ぶり返しにくく“手なずける”というやり方が大事と言われています。
ぜんそく治療に関しても、吸入ステロイドを使い、目には見えない、実際は荒れている気管支をしっかり治療し、ぜんそく発作を起こさないように“手なずける”ことがポイントです。
昔のぜんそく治療は、気管支が狭くなって苦しくなるので、「気管支を広げて楽にする」という方針がメインだった訳です。「気道炎症」といわれる気管支の荒れを治さなければ、「ゼーゼー」のいいやすさは遠ざけることができません。
昔はよく耳にした「ゼーゼー」も、今では病態の解明が進んだこともあり、聞かなくなってきました。25年と言えば、四半世紀。私も年を取ったものです(汗)。