オリンピックは、感動あり、興奮ありで楽しいですね。
見ている方は気楽なものですが、アスリートは場合によっては押しつぶされそうなプレッシャーの中、戦っているのでしょう。それにしても、羽生選手、小平選手は特にすごいです。
世界一なのですから、「世界の羽生」、「世界の小平」と言えるし、間違いではないと思います。
食物アレルギーの分野では、「世界の大矢」なんだろうと思います。一昨年の「すこやか健康フェア」で特別講演をお願いした成育医療研究センターの大矢先生のことです。
食物アレルギーのガイドラインなどは別の先生が取り仕切っていますが、新たな視点で新しいデータをバンバン出しておられるのは、大矢先生しかいないと言っても過言ではないでしょう。
この週末、食物アレルギーの全国学会があった訳ですが、私は食物アレルギーの中で最多の卵アレルギーの発症予防について、当院での研究結果を発表してきました。
一昨年の12月ですから、1年ちょっと前に成育医療研究センターから卵アレルギーの発症予防に関する論文が発表されました。この場でも何度か触れていますが、生後4、5か月の時点でアトピー性皮膚炎の患者さんをピックアップし、湿疹をしっかり治療した上で、生後6か月から継続的に少量の卵を食べさせると、1歳の時点で卵アレルギーを予防できるというものです。
それを知り、「これからは食物アレルギーは予防していく時代だ」と感じ、アトピー性皮膚炎を早期に診断し、治療すれば食物アレルギーで最多の卵アレルギーを攻略できるのでは?と考えました。
アトピー性皮膚炎の湿疹は、生後1か月で出ることが多いようです。実際、経過をみていくとアトピー性皮膚炎と確定されることが多いです。食物アレルギーは、アトピー性皮膚炎の湿疹から食べ物が入り込んで発症するとされていますので、早期に治療に取り組み、湿疹を改善させれば、食物アレルギーは発症しないことができるかもしれないと考えました。
実際、治療に取り組んでみると、のちに卵のアレルギー検査が上がる人と上がらない人が出てきます。
それが皮膚の治療が上手くいかずに上がってしまったのか、それともそうではなかったのか、知りたいと思いました。先日の学会では有名専門病院の先生や大学教授など名だたるメンバーが集まっていましたが、私の疑問に答えられる先生は、残念ながら大矢先生しかいませんでした。
世の中には食物アレルギーで困っている患者さんが大勢いますし、専門医が少ないせいもあり、食物負荷試験など適切な医療を受けられる患者さんも非常に限られます。当然、私のように食物アレルギーの発症予防の研究を始めている日本の第一人者も多いかと思いきや、現状ではほとんどいないようです。それが不思議でなりません。
それを目の当たりにして、日本の食物アレルギー医療は大丈夫かと思いましたし、失望もした訳です。
大きいことを言うようですが、学会側に任せておけないなと思う部分もあり、今後も当院の負荷試験のやり方や発症予防について成果を発表していかなければならないと思った次第です。