アレルギーに関心を持ち、福岡の専門病院で学ばせていただいたのが平成13年のことでした。
日本最高峰の医療に触れ、それ以来、ちょうどその頃出てきていた小児ぜんそくのガイドラインに沿った医療をすることが、私の仕事になりました。
当時のガイドラインの作成委員は、雲の上のような先生ばかりで、私にとって「守るべきもの」という認識でした。
その後、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーもガイドラインが作られ、同じ感覚でガイドラインを活用してきました。今は、ちょっと変化が起きているようです。
特に食物アレルギーについては、この場でよく触れているように、もはや日進月歩。「経皮感作」により食物アレルギーが起こることが分かってきました。アトピー性皮膚炎の湿疹を早く見つけ治療すれば、予防できるのではないかと考えています。
また、従来は食べて症状が出ると、除去を指示していましたが、今は食べさせる姿勢が大切だと言われています。つまり、微量でも食べて、体に慣れさせていくという方法です。
当院は、開院時から卵アレルギーなら、卵料理を食べてアナフィラキシーを起こしても、卵クッキーを食べさせていました。強い症状が出れば、除去継続なんて言われていた時代でした。つまり、ガイドラインをちょっと破っていた訳です。
当時は、それが卵アレルギー克服につながると強く確信していた訳でありませんが、食べられるんだから、食べさせてあげたいし、食べられることが分かった時の親御さんのうれしそうな顔を見るのも好きでした。
そして、一昨年の食物アレルギーのガイドラインで初めて、卵や乳、小麦を3段階に分けて、重症者には「少量」、中等症には「中等量」、軽症には「日常摂取量」を負荷試験することが示されました。
卵アレルギーなら「卵クッキー」、「カステラ」、「卵焼き」と3段階に分けて負荷試験をしていますが、私は平成14年からやっていることです。この点については、ガイドラインは遅れること14年ということになります。
アレルギーについては、こだわり、どうしたら患者さんを良い方向にもっていけるか、日々考えているつもりです。私にとって、ガイドラインは「守るべきもの」ではなくなってきたのです。
結局、こういう日進月歩の分野は、ちゃんとした根拠が論文化されてからガイドラインに採用されるので、すでに当たり前のことが書かれているだけだったりします。こだわればこだわる程、ガイドラインにしがみついていてはいけないと考えるようになりました。
そして今は、アトピー性皮膚炎です。アトピー性皮膚炎の診断基準は、湿疹の存在、痒み、2か月以上の慢性の経過の3つが欠かせないことになっていますが、それを待っていてはいけない状況になっています。食物アレルギーという観点では、もう卵アレルギーが始まってしまうのです。
いかにアトピー性皮膚炎を早く見つけて、治療にもっていけるかを考えています。ここだけはガイドラインを超えて対応していくべきだと考えています。
私とガイドラインの位置関係は、だいぶ変わってきたなと感じる今日この頃です。