以前、いろいろな病気の中で、ぜんそくが最も治療が継続できない病気であると聞いたことがあります。
ぜんそくは、季節の変わり目だったり、風邪を引いたり、台風の接近にともない、激しい咳や呼吸困難を引き起こすことがあります。
発作を起こしやすいお子さんは、日頃から内服や吸入といった治療を継続して症状を出にくくする必要があります。発作を繰り返すことで、更に発作を起こしやすくしてしまうので、あらかじめ治療を継続して、発作を起こしにくくしてしまおうという作戦です。
残念ながら、多くの患者さんにとって、「のど元過ぎたら熱さ忘れる」で、治療の継続が面倒くさくなってしまうようです。毎回、発作を起こし、苦しくなってから、当院を受診される患者さんもいます。
食物アレルギーでも、こういうことは起こり得ます。先日、こんな経験をしました。
2年も前に、食後に運動してアナフィラキシー症状を起こした高校生がいました。
原因は、もしかしたらリンゴかもしれないと考えました。エピソードからスと、リンゴによる食物依存性運動誘発アナフィラキシーを疑いました。エピペンを処方し、皮膚テストもやる必要があり、リンゴを食べた上で運動してもらい、アレルギー症状を起こすかどうかみる誘発試験の説明もしました。
誘発試験は、当院のこだわっている加工品を使うようなことができないため、一発勝負となります。もちろん患者さんの原因を特定したいがために実施しており、患者さんに不利益なことがあれば、医師免許を返上するくらいの覚悟で行っています。
原因が分かれば、アナフィラキシーを避けることができるため、患者さんのメリットも大きいと考えています。それくらい覚悟を決めて、検査をするつもりだったのですが、それ以来、プッツリと受診がなくなりました。
1年経って、エピペンが切れても音沙汰なし。2年経って、高校を卒業することになって、ひょっこり受診されました。「今度、大学に進むことになり、万が一に備えてエピペンが欲しい」ということでした。しかも来週には、上越を離れるのだそうです。
こういうところで、例を出すのも申し訳ないと思いつつも、食物依存性運動誘発アナフィラキシーについて時間をかけて説明し、精査の重要性を説き、医師免許返上の覚悟までして、医師として誠意を持って対応した結果が、何故こうなるんだろうと悲しくなりました。
世の中には、いい加減な医療をする医者が多いのは事実でしょう。つまり、患者さんの期待を平気で裏切る医者です。それよりは、患者さんに裏切られる方がマシですが、このモヤモヤ、しばらく尾を引きそうです。