食物アレルギーの最終的な診断は、食物負荷試験によります。
私が負荷試験を新潟の地で始めた16年前は、誰もその存在を知りませんでした。当時は全国的にも負荷試験をやっている施設は少なかったため、当然と言えましょう。
新潟の地に負荷試験を根付かせたいと、活動を始めました。今では多くの親御さん、園•学校関係者が負荷試験の存在を知っており、私の活動の影響も少なくないだろうと自負しています。
新潟県内は、当院以外はほんの数人程度の小児科医が実施しているくらいですが、県外に目を向けると結構さかんに行われているようです。
患者さんの少しでも食べられるようにという想いが負荷試験を始めたきっかけだと信じたいのですが、売り上げを上げたいとか、病床稼働率を上げたいなどの理由で始めた医師もいるのだろうと思います。
負荷試験が陰性なら、食べられる訳で、まあ負荷試験を実施する医療機関が増えることはいいことでしょう。
学会に参加していると、負荷試験を始めて間もない施設が、「当院の負荷試験の現状」などと題して発表しているケースを目にすることがあります。見ていて、危なっかしいなと思います。濃いものを負荷して、アナフィラキシーを起こしたりしています。
問診である程度重症度は分かると思うのですが、慣れていないと融通が利かないのでしょう。強い症状を起こしたりしています。患者さんも、医師に勧められてやっているので、文句も言えないのでしょう。
何が言いたいかというと、負荷試験の質が重要だということです。
医療機関によって、負荷試験の上手、下手は残念ながら大きな差があります。有名病院であっても、上手とは限らないように感じています。型にはまった負荷試験をやりたがるため、端から見ていると「アナフィラキシーを起こした当たり前」なんて思うこともあります。
最近思うのは、アナフィラキシーを起こさない負荷試験がベストなんだろうということ。
負荷試験をやっていると、驚くほど低年齢のお子さんであっても食べたがらずに、負荷試験が中止になってしまうことも時々あります。小さいなりに、その食材に対し恐怖心を持ってしまっているのでしょう。
自宅などで強い症状を起こしてしまったのなら仕方ありませんが、負荷試験を行うことで、患者さんにその食材に対してネガティブな感情を抱かせることは極力避けなければなりません。
日本各地の大病院で、負荷試験が年間1000件以上行われているでしょうが、と同時にアナフィラキシーも少なくないのだろうと思っています。多分、「重症が多いから仕方ない」と思っていると思うのですが、私はそれは違うと考えています。
それを減らすようにしていかなければいけないのは、明らかだと思っています。