いま、全国的にもっとも忙しいのは耳鼻科医ではないでしょうか?。
当院はそうでもないですが、小児科医は季節労働者的な感じで、インフルエンザが流行れば忙しくなり、すたればヒマになります。そのギャップは大きいと思います。
今年はスギ花粉の飛散が多く、多くの患者さんが症状が重くなってから、医療機関を受診されるので、この辺りでは3月の上旬から耳鼻科医のもとへ多くの患者さんが殺到していると思われます。
当院も、花粉症症状を訴えて受診する患者さんが増えています。ただ、ここで注意していただきたいことがあります。
医師に花粉症だと言われても、そうではないこともあるからです。この場で、正しく診断し、適切に治療することが重要だと書いているつもりです。
小児科医は「咳」=「風邪」と判断することが多く、風邪薬を出して症状が改善しなくても、“風邪薬”を処方し続ける傾向があります。軽いぜんそくを平気で見逃してしまうのです。
それと同様に、耳鼻科医はこの時期の「鼻症状」を「花粉症」と診断することが多いようです。
確かに最近は、鼻が出ると花粉症の可能性があります。小児科でも0歳や1歳といったスギ花粉症を発症することはまずない年齢の赤ちゃんであっても、親御さんから「スギ花粉症でしょうか?」と聞かれることが結構あります。
正しく診断するには、血液検査と因果関係と明らかにすることが大切だと考えます。そもそもスギに弱い体質であることを明確にする必要があり、一般的にはスギの抗体があるかどうかを確認しています。
また、スギの値がとても高ければ、そう診断できるのでしょうが、クラス2くらいの数値が上がってきている途中の場合は、少々困ります。
その場合は、スギ花粉にさらされた時に症状が出るのかを問診しています。要するに、晴れの日に外に出た時に目や鼻症状が悪化するかを確認しています。食物アレルギーも、食べ物を食べてまもなくアレルギー症状を起こすはずなので、因果関係を確認するのは当然の話です。
いま述べてきたように、スギの抗体や因果関係を大して確認されることなく、スギ花粉症と診断されている患者さんは結構多いのだろうと思います。
実際、耳鼻科でそう診断された患者さんが当院を受診され、違和感を覚えたので検査してもたら、スギがクラス0だったこともあります。また、これは当院の話ですが、目や鼻症状を訴えて受診したお子さんにアレルギー検査させていただいたら、スギは0、ダニがクラス6で、花粉症ではなく、ダニが原因であろうと考えたケースもありました。
確かにスギ花粉が原因でなくても、抗アレルギー薬の内服、点眼、点鼻薬で治療しますので、治療自体はそう変わりません。医者は「どっちでもいいじゃん」と思っているのかもしれませんが、そうではないと思います。
原因が外にあるか、中にあるかを明らかにすることは重要でしょう。特に重症の場合は、晴れの日は外出をなるべく避けるのも対策の一つですし、この辺ではゴールデンウィークくらいまでスギ花粉が飛ぶので、それ以降は治療は中止していいことになります。ダニが原因なら中止はなかなかできず、環境整備も重要なことになります。
医師は外来が混むと、手を抜きたがるものですが、それは本末転倒であるし、患者さんも医師の言うことは絶対だなんて思わないことも大切なのだろうと思います。