食物アレルギーの治療は、食べられる範囲内で食べるとされています。
その食物アレルギーの診断の目安に使われているのが、特異的IgE抗体と呼ばれるもので、クラス0~6の7段階で表されます。
一般的には、クラス0、1は関係なく、クラス2以上が「陽性」とされ、除去の対象となっていますが、「陽性」であっても、“食べられる範囲で食べる”ことが重要です。
この場で、当院では卵白がクラス6でも、10人以上が負荷試験を通じて食べられることを確認しており、除去していないと何度か書いています。それを読んで、遠方から藁をもつかむ思いで受診される患者さんもいらっしゃいます。
いま書いてきたように、クラス6だろうが、“食べられる範囲で食べる”のが鉄則だからです。多くの医師が、専門医であっても、その鉄則を守っていないことが問題だろうと思っています。
正直、私の経験から、卵はクラス6だろうが、少量から食べさせていくと、食べられるようになることが多いと思います。他の食品は、卵ほど負荷試験はやってきませんでしたが、食べられる範囲で食べさせることで、治るきっかけを作るべきだと考えています。
ある意味、「当院らしいな」と思うのですが、先日、負荷試験をやった患者さんにクラス6の患者さんが2人いました。食材は、イクラと牛乳です。どちらもアレルギー採血でイクラとミルクがクラス6であることを確認しています。
それでも負荷試験をやりました。「えっ、アナフィラキシーを起こしちゃうじゃないの?」と心配されると思います。はい、可能性はあります。でも、アナフィラキシーは起こしませんでしたよ。いや、起こさないように行ったと言う方が適切でしょうか。
イクラは、1粒を食べずになめて、すぐに口から出してもらいました。それで続行可能なら、1粒ずつ食べさせていきます。2粒食べたところで、「食べたくない」と言うので、終了としました。
「食べたくない」というのは、症状が出ていなくても、終了の目安になると思っていますし、続行すればアナフィラキシーを起こす可能性が高まると考えています。
牛乳アレルギーの患者さんも、ミルククッキーを食べているという話から1mlから開始しました。7ml飲んだところで、「もう十分頑張った」ということで終了しています。
イクラは生だし、治らないとお考えかもしれません。成育から出られた先生から、少しずつ食べさせていたら治ったという話を聞いたことがあります。今回の負荷試験結果を受けて、治ることを目標に微量を摂取してもらおうと思っています。
牛乳に関しても同様です。ポイントは7mlいつも摂れるとは限らないということでしょう。牛乳は体調や運動によっては、7mlでアナフィラキシーを起こす可能性があります。
冒頭に食物アレルギーの治療の基本を書きましたが、クラス6だろうが、「食べられる量」はあるはずですので、それを見つけてあげたいところです。
「クラス6だから負荷試験どころではない」という医師は、アレルギー専門医であっても、あまり信用できません。負荷試験はクラス6だとやってはいけないという決まりはありません。
食物アレルギーは、除去を続けると、より過敏性が増し、治りづらくなるという考え方もあります。安易に完全除去を続けると、かえって危険なんだろうと思っています。
私に言わせれば、完全除去を続けるよりは、熟練した医師から負荷試験を行ってもらい、“食べられる範囲内で食べる”ことがとても重要だと考えています。