日頃から書いているように、開業医であっても主義主張のある診療を行っているつもりです。
多くの小児科医、皮膚科医が“乳児湿疹”などとのん気なことを言っていますが、食物アレルギーを予防するためには、アトピー性皮膚炎を早期発見・早期治療することが重要であるため、今年はそれについて何度も全国学会で発表をしようと思っています。
それはたまたまであって、開業医の基本である診療において妥協せず、患者さんのために自分なりのベストを尽くすのはマストだと思っています。
医師は、難しいケースに遭遇すると、かわしたり、逃げたりすることがあります。そういうことは患者さんに失礼に当たると思っています。
2、3年前にカレーを食べてアナフィラキシーを起こした患者さんを担当し、スパイスアレルギーであることを見出しました。
スパイスアレルギーは、まだ珍しい部類のアレルギーだと思われ、論文を検索しても皮膚テストで診断しており、食物アレルギーの確定に必要な食物負荷試験をしているケースは、ほとんど見かけません。
患者さんの対応で困っていた頃、食物アレルギーで超有名な先生に質問しようと、学会会場でその先生に声を掛けたことがあります。ご経験がないのか、すぐさまその先生の病院の内科で食物アレルギーもやられている「〇〇先生に聞いて」と一言だけ言われました。
また、最近5、6歳児で、カレーを食べてアナフィラキシー症状を起こしたお子さんが受診されました。
新潟はアレルギーが遅れている県ですが、関東からこれまた超有名なアレルギー専門医が時々診療に来られる病院が、実はあるのです。月に1回くらい診療されているようですが、ある小児科医に診てもらい、その有名な先生の外来を受診するよう勧められて、ようやく受診できることになったのだそうです。
期待して受診してみたら、一言、別のアレルギー専門医の外来を受診するように言われたのだそうです。せめて関東の自分の大学病院に来てもらい、精査をしようとするのなら分かるのですが、かわすというか、逃げるだけだったようです。
日本の第一人者とされる先生は、逃げたり、かわしたりしないものだと思っていたので、この反応には少々驚きました。
私の場合、「新潟の患者さんは新潟の医師が守る」と考えているため、こういう患者さんが受診されると、逃げも隠れもできないのです。患者さんも“最後の砦”と思ってくださっているののかもしれませんが、自分で責任を持って診ようと思ってしまうのです。
結局、大人のカレーでアナフィラキシーを起こした患者さんは、原因のスパイスを絞り込むために、多くの専門医さえも行っていないスパイスで負荷試験を行いましたし、幼児のカレーアレルギーの患者さんも、まずカレーに含まれるスパイスをメーカーから聞き出して精査を行っています。
当然のことをやっているだけではありますが、それなりの苦労やプレッシャーはかかえています。自分のところで、止めなければ(受け止めなければ)いけませんから。
地方でアレルギー専門医を謳い、診療している医師の苦悩を少々理解していただけますと幸いです。