食物アレルギーの分野で、閾値という言葉があります。
「いきち」と入力し変換すると最初にこの漢字が出てきますが、2番目に「生き血」と出てきてビックリ(笑)。
食物アレルギーは以前の時代は、とにかく除去でした。卵アレルギーなら、卵全般と鶏肉、魚卵まで除去、大豆アレルギーなら豆類は全て除去のようになっていました。
2000年に入って、負荷試験がちょっとずつ広まってきました。この頃は、閾値を知る検査だったように思います。卵アレルギーなら卵焼き1個、牛乳アレルギーなら牛乳200mlを負荷し、症状が起きるかどうかでシロクロをつけるという形です。
重症な患者さんに濃いものを負荷すれば、たいていアレルギー症状が誘発されます。アナフィラキシーに陥ることもあったでしょう。「ああ、やっぱりダメだったんだ」という感じだったのだと思います。
負荷していく中で、症状が出た時の量が閾値となりますが、以前の学会の考え方は、閾値を明らかにすることこそが重要と考えていたようです。
当院では、当時から卵アレルギーなら卵クッキーを用いて負荷試験を行っていました。3枚負荷し、症状も出ずに完食すれば、そこで終了としていました。
しかし、学会幹部は「それでは閾値は分からない」、「閾値の分からないものは負荷試験ではない」と考えていたようです。
私から言わせれば、「閾値が分かる」=「アレルギー症状が出る」ということであり、患者さんは辛い症状に苦しむことになります。医者はアナフィラキシーを起こせば、アドレナリンを注射すればよいと思っていたようです。更に、そのアレルゲンを摂ることを怖がり、親御さんも食べさせたくないと考えるようになります。
つまり、医者は学問的なことを中心に考えていて、患者さんファーストではなかったのだろうと思っています。
それが証拠に、私がどんなに学会で加工品を負荷し、症状を起こさないことの重要性を発表しても、学会側は聞く耳も持ちませんでした。
最新のガイドラインには、重症には少量、中等症には中等量、軽症には日常摂取量というように負荷する量が3段階に分けられ、症状を起こさない負荷試験が勧められるようになりました。私からすれば、パクられた気持ちが強いのです。
未だに負荷試験をやって、症状が強めに出ると完全除去と指導する専門医も少なくないですが、まだまだガイドラインというか、食物アレルギーの分野は患者さんファーストではないなと思っています。