私は、約11年前に開業医としての道を歩み始めました。
開業準備の中で、何人かの小児科医のもとを訪れました。既に開業されていて、どのようにやられているのかを知る目的です。医院の設計図を作る上でも参考になります。
その中で、バリバリ神経が専門の小児科医がいました。私はアレルギーが好きだから、アレルギーを専攻している訳ですが、神経だったり、腎臓、血液に関心を持つ小児科医もいるのです。
その地域は、神経が専門の小児科医がいなかったので、地域のためにも開業しても専門医としてのプライドは持ち続け、役目を果たしているのだろうと考えていました。聞いてみると、神経の病気で重い患者は、その地域の中核病院に紹介するのだそうです。
その総合病院に神経の専門医はいないので、「何故だろう?」と思いました。これまで興味を持って学んできたキャリアを捨てるのは、何とももったいない話だと思いました。
確かに、小児科開業医で、神経が専門ですよと強く謳ったところってあまりないようです。逆に、そうすることで「あそこは神経の患者しか診ないんだ」と思われてしまっては困るということでしょう。「何でも診ますよ」と言った方が、広く集客できると考えたのでしょう。
その点、当院はバリバリアレルギー専門を謳っています(笑)。
周囲からは「あそこはアレルギーしか診ない」と思われいるのかどうかは分かりませんが、大勢の患者さんから頼りにしていただいているように感じています。新潟県内のほぼ全域、隣接する県からも患者さんが通ってくださっています。
開業医の“成功”って何かは、医師によって異なるとは思います。多くのお金を稼ぎたいと考える人はとても多いと思います。私自身はそんなことを考えたことはないんです、ホントに!。
とにかくアレルギーにこだわり、多くの患者さんの役に立ちたいと思うし、遠路遥々受診される方も多いですが、期待を裏切りたくはないと思っています。
当院で診ている患者さんで、夜尿症の相談を受け、いろいろな治療を試していた患者さんがいました。これまた難治で、親御さんから関東の方に夜尿症の専門医(開業医)がいるから、紹介して欲しいと言われました。夜尿症の治療に特化したクリニックのようです。
紹介当初は、その先生から「これは難しいケースで、時間がかかる」と言われたそうです。その後、経過を親御さんに聞いてみると、夜尿症の症状がかなり改善しているとのこと。さすがは専門医だなと思いました。
一般的に、開業医はレベルが低く、症状がよくならなければ総合病院へなんて考えている人は多いだろうと思います。開業医はアットホームだけど、重い病気になると対応できず、頼るべきは総合病院と認知されていると思っています。
いやいや、開業医でもこだわれば、かなりの領域までいけるのだろうと思っています。それを実現させるのが、私の“成功”なんだろうと考えています。
広く子どもの病気を診て、そこそこの小児科開業医になりたいと思うよりは、興味のある専門分野にこだわりまくり、患者さんの役に立ち、社会貢献していく方がいいと思うし、そういう開業医が増えてこないといけないのだろうなと思っています。