小児科 すこやかアレルギークリニック

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感染症情報
2018年05月26日 更新

感染症情報というものがあります。

自分のお子さんの通う園や学校に、インフルエンザや水ぼうそうが発生したりすると気になりますよね?。周囲にいれば、もらいやすい訳です。

親御さんも、お子さんが熱を出したり、吐いたりして小児科を受診した際に、正しく診断して欲しいため、「うちの園にインフルエンザがいます」とか、「感染性胃腸炎が流行っています」と真っ先に伝えてくださいます。

その感染症情報ですが、残念ながらいつも参考になるとは限りません。

先日、ぜんそくで治療中の患者さんが発熱をして、当院を受診されました。親御さんからRSウィルスとヒトメタニューモウィルスが園にいるという感染症情報をお聞きしました。

RSもヒトメタも呼吸器の感染症ですから、とにかく熱と咳、鼻水が悪化することが多いのです。ぜんそくを持っていれば、咳も鼻もかなり悪化することが多いと感じています。

問診票を見ると、咳も鼻も出ていないと記載されています。私はこの時点で「おかしいな」と感じました。とりあえず、冷静に診察するのみです。

ぜんそく児がRSやヒトメタにかかると、聴診器で喘鳴が聞かれる可能性が高くなります。咳が出ていないので、予想はしていましたが、聴診上は異常なし。のどを診ると、かなり赤いのが気になりました。

上越市内では、溶連菌が結構流行っています。その子の通う園に溶連菌はいないとされていますが、診察を終わっての印象では、RSやヒトメタの可能性は低く、溶連菌やアデノウィルス(これも扁桃炎を起こしやすいウィルス感染症)が考えやすいと思いました。

溶連菌などは、咳や鼻水という症状よりは、発熱、咽頭痛が主体だと思っています。のどが痛いとは言いませんが、溶連菌を調べてみました。

その結果は、陽性でした。溶連菌が検出されたのです。

いまは寒暖差が大きく、風邪引きさんも少なくないのですが、きっと園では溶連菌が見逃されているのでしょう。親御さんを通して、園に溶連菌が出たという“感染症情報”がもたらされることになります。

そうすると、他の医療機関を受診した際、溶連菌がいるというヒントが得られるため、溶連菌を調べてもらえるようになります。一般的に、小児科医は感染症情報をもとに診療していると思うのですが、個人的にはアテにならないことが多いと感じており、感染症のお子さんを診た場合、ひとりひとり考えながら診療に当たっています。

ぜんそくの患児が熱が続き、咳が悪くなっている場合、RSないしヒトメタを調べるようにしています。ぜんそくを悪化させないように責任を持って診療しているため、自分が思った以上に悪化していれば、悪化要因を探す努力をしています。

多くの小児科医は、特にRSウィルスを調べると、患児の年齢を気にします。0歳児なら損はしませんが、1歳以降では検査費用が持ち出しになり、損になるので、検査を露骨に避けています。

当院は、患者さんに悪化要因を正しく伝えたいがために、損になろうがRSウィルスなどは積極的に調べています。自分の感覚は正しいようで、そうするとRSやヒトメタを見逃す確率は低くなるようです。

感染症情報は、損得を気にする医者の元からは正しい情報が発信されていないようです。こういう現実も知っておいていただきたいと思っています。