小児科 すこやかアレルギークリニック

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低酸素
2018年05月30日 更新

昨日、地元の医療レベルの低さを象徴するような出来事がありました。

1歳になったばかりの赤ちゃんが、当院を初診されました。熱が続き、咳もあり、睡眠障害もあったようです。

当院のスタッフは優秀な人もいて、事前に酸素の取り込みを測ってくれていました。酸素濃度が88~90%でした。低酸素状態です。

実は、他の小児科がかかりつけで、何度かかかっていたようです。当日も受診し、薬はもらったのですが、症状が改善せず、夜も眠れないため、当院に救いを求めて受診された格好です。こんなケースは、よくあることです。

発熱は、ダラダラ続いており、6日目でした。熱が続けば、私なら「風邪ではない」と考えます。そりゃそうですよね。風邪で熱が6日も続くはずがありません。熱が続き、低酸素を起こす可能性のある感染症を考えます。RSウィルスかヒトメタニューモウィルスかなと予想しました。

聴診すると、ゼーゼー言って、低酸素をきたすのなら、それらがより考えやすいのですが、喘鳴は聴取されませんでした。それら2種類のウィルスは検出されませんでしたが、ぜんそくの気があれば、低酸素を起こし得るし、気管支拡張薬の吸入をすれば、改善するだろうと考えました。

吸入後、肺の音を聞き直しましたが、喘鳴は聞かれず、酸素濃度も90%という低い値から変化はありませんでした。ぜんそく系の病気という発想から少し離れないといけないようです。

改めて聴診し直すと、右の呼吸音が減弱しているようです。人間の肺の音は左右対称なはずですが、差があるのはおかしいのです。自分で言うのも何ですが、多くの小児科医が聴き逃すレベルでしょう。何か異常を見つけるために入念に聴くことで、気づいたという感じです。

レントゲン写真を撮らないと分からないようです。胸のレントゲンは、勤務医時代は放射線科にオーダーすれば、他の患者の診療中にできてくるのですが、開業医は自分で撮らないといけません。

ここまでで、RSやヒトメタが陰性だったこと、あまりぜんそく的な感じではないこと、熱が6日に続き、低酸素をきたしている原因を解明する必要があることを親御さんに説明し、レントゲンを撮る必要性の了承を得ました。

レントゲン写真を見てみると、右胸に肺炎像を認めました。右側に膿がたまっているので、呼吸音が弱かった説明がつきます。採血もさせてもらうと、CRPという炎症反応は16.0と目の飛び出すほどの高値でした。

市内に入院できる病院が2つあるので、どちがらよいか希望を聞き、病院の先生に入院のお願いの電話を入れました。夕方だったので、急いで紹介状を書き、速やかに受診していただきました。

今回は、呼吸器感染症が原因でアレルギーではなかった訳です。小児科医は誰でもプロなはずです。ところが、前医ではこれだけ症状が続き、こじれていたにもかかわらず、“風邪”という診断で、検査もなく、薬が出るのみでした。

地方の開業医のレベルを象徴するような事例だと思っています。こんなことができてしまう小児科医って、少なくないという印象です。

「かかりつけ医」とは、患者さんが具合が悪くなった時にこそ、見逃さずに力を発揮する医者を指すのであって、適確に診断し、速やかに改善させるよう治療に結びつける。入院が望ましいのなら病院に紹介する医師のことを言うべきでしょう。

効率を求め、薬をテキトーに出して、「はい、一丁上がり」とやっているベレルの低い医者って少なくないですから、お気をつけ下さい。