小児科 すこやかアレルギークリニック

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湿疹の悪化
2018年06月06日 更新

以前の食物アレルギーの考え方はこうだったと思います。

乳児期の湿疹がなかなか良くならないと、アレルギー採血を行う医師が多かったようです。すると卵白などが陽性になっていたりします。

「あっ、卵アレルギーだったんだ」と母の卵摂取をやめるよう指導していました。日本の第一人者の某先生は、そうすることで湿疹の悪化を改善させられる、ステロイド軟膏もあまり使わなくて済むと言っていたように思います。

確かに母の母乳の中に、食べた卵の100万分の1から10万分の1の卵成分が含まれるそうです。そんなわずかな卵であっても、赤ちゃんが元気に母乳を飲めば、塵も積もれば山となるで、湿疹を悪化させるだけの量になりうると考えられていました。

この考え方が主流の時も、私は医師の立場でした。母の卵を除去させたからといって、湿疹が急激に良くなるという経験はほとんどしたことがありませんでした。

学会の懇親会などでその点を質問したりしましたが、「そういうこともあるんだ」と言われ、何か納得いったような、いかないような状態でした。

今はどうでしょう。アトピー性皮膚炎の湿疹から「経皮感作」が起きて、食物アレルギーが作られるとまったく考え方が異なります。しかも、経口摂取は、食物アレルギーを寛容するように働くとされます。

そう考えると、母乳経由の微量の卵は、卵アレルギーの改善に役立つことはあれ、湿疹の悪化要因ではないということでしょうか?。

今では、母の卵などの食物制限をする医師はほとんどいなくなっているようです。まず湿疹を改善させて、なるべく食べさせて、食べられるようにするという考え方に変わってきているようです。

結局、昔も今もアトピー性皮膚炎の湿疹があり、そこがスタートになっているのでしょう。アトピー性皮膚炎の治療は、残念ながら根本的な治療はなく、ステロイド軟膏を塗り、皮膚の炎症を減少させる対症療法が主体となっています。

私自身も、アトピー性皮膚炎の治療のチカラを注いでいますが、かなり治りづらいことを実感しています。母に卵を除去させたくらいでは、湿疹が良くなるとは到底思えません。

もっと昔は、湿疹が良くならないと卵、乳、大豆を除去し、それでも改善がなければ小麦や米も除去するように指導していた時代があったようです。その結果、栄養不足の赤ちゃんが発生したと聞いています。時代の変遷を感じてしまいます。

先日の学会で、某先生は卵等の摂取で湿疹の悪化があることがあると発言されていました。若い医師から「食物アレルギーで湿疹は悪化しないんですよね」と言われて、困っているとも漏らしていました。

であれば、ちゃんとデータを出すべきじゃないかと私は思っています。経験のある人があると言い、ない人がないと言う。これじゃ学問じゃないですよね?。これを認めると、その先生のこれまで積み上げたデータが変わってきてしまうという危機感もあるのでしょうか。

だいぶ解明されてきたとは言え、食物アレルギーは何だか釈然としない部分が残っているのも事実だろうと思います。学会がリーダーシップをとり、各医師が横並びなシンプルな対応ができるようにしていくことを期待したいと思っています。