小児科 すこやかアレルギークリニック

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サプライズ
2018年06月14日 更新

以前、クルミの負荷試験をして、アナフィラキシーショックに至ってしまった事例の話をしました。

当院の負荷試験のコンセプトは、「いかに重い症状を起こさせないか」です。いまだに負荷試験は研究的な臭いがプンプンします。

負荷試験で症状を起こさないと、閾値(症状を起こすボーダーライン)が分かりません。閾値を患者さんに知ってもらうことは大事だとは思いますが、起こしても軽微な症状で抑えておかないと、その後の展開に大きな影響を及ぼします。

つまり、その食品に対し、恐怖心が大きくなり、二度と口にしたがらなくなります。危険な食品を食べたがらないということは、それはそれでいいことなのかもしれません。

でも、私はそうは思いません。少しずつ食べて、体に慣れさせて、もっと食べられるようにしたいと思っているからです。そうやって閾値を上げていきたいと考えています。

学会は、これまで閾値を分からないで食べさせるのは危険というようなことを言ってきました。分かるように負荷試験をして、アナフィラキシーを起こしてしまえば、元も子もなく、かえって危険なんだろうと考えてきました。

学会が何と言おうと、加工品を食べさせ、症状を出ないことを最優先に負荷試験に取り組んできたつもりです。私のやっていることが、正しいと今でも思っています。逆に、学会が「少量負荷」なんて言って、私のやり方にすり寄ってきたように思います。

冒頭のクルミの負荷試験についても、そこまで強い症状を起こさせるつもりはまったくなく、食べられる量を知り、少し食べ慣れてもらうために実施したことでした。

この患者さんは負荷試験をした時点で、保育園児でしたが、この春に市内の小学校に上がりました。

私は、この子の通う学校に出向き、わずかな量のクルミを食べて、アナフィラキシーショックに至った状況を学校の先生方に知っていただき、万が一の誤食時に速やかにエピペンを打っていただけるよう、お願いにいきたいと考えていました。

先日、ようやくそれが実現し、ある小学校に行ってきました。ゼーゼー言いたりして、息苦しさを訴えてくれれば、緊急事態であることは誰の目にも明らかでしょう。この患者さんの場合は、吐いたあと、ウトウトして血圧低下に陥ってしまったのです。緊急事態であることに気づきにくいようです。

それをお伝えすることで、気づくこともあるだろうし、迷ったらエピペンを打つくらいの気持ちでいて欲しいと思っています。

こういう研修会でよく園や学校に出向いていますが、サプライズをすることもあります。

患者さんから寄付していただいた廃棄用のエピペンを校長先生か養護の先生に実際に握っていただき、打っていただくのです。もちろん、人の体には入らないようにします。練習用のエピペンとは違い、強力なバネを使っていますので、音と振動(衝撃)は相当異なります。それを実際に体験してもらおうという狙いです。

このサプライズを行うと、相当な緊張感を持って練習していただけるようです。緊張感を持って取り組んだことは忘れにくいでしょうし、実際アナフィラキシーショックを起こしやすいお子さんの通う園や学校の研修会では、こういう練習を行った方がいいと考えています。