小児科 すこやかアレルギークリニック

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2018年06月28日 更新

先日、日本アレルギー学会に参加してきました。

成育医療研究センターの大矢先生が食物アレルギーの発症予\防について講演されましたが、広い会場がほぼ埋まる盛況ぶり。この学会は、小児科医のみならず内科医、皮膚科医、耳鼻科医など多くのアレルギーに関わる医師が参加しており、多くの医師の関心の高さを表しているのだろうと思っています。

にもかかわらず、新潟県内で診療している限り、湿疹からの経皮感作を防ぎましょうなんて医師から説明されている患者さんに遭遇したことすらなく、小児科医のみならず、皮膚科医なども含めて共通理解にしておくべきで、やはり新潟はアレルギー後進県だなあと感じた次第です。

湿疹から経皮感作を起こし、食物アレルギーを発症するという事実は、この場でも何度も書いていることです。ただ、湿疹の原因がアトピー性皮膚炎なのかどうか、いつ経皮感作を起こすか、どうしたらいいかなど、そこまで考えている医師は少ないように思います。

ひとつの理由が、湿疹の出たばかりの乳児は、大学病院や専門病院にかかりません。近間の開業医にかかることがほとんどのはずです。そこで“乳児湿疹”と診断されることが多いのでしょう。

結局、湿疹が小手先の治療では改善せず、本当は慢性の病気であるアトピー性皮膚炎なため、湿疹もかなり悪化し、ようやく大学病院や専門病院に辿り着きます。そしてやっとアトピー性皮膚炎と診断され、アレルギー採血も行われ、卵や乳の感作が証明されるという流れになるのだろうと思っています。

要するに、関心の低い開業医でスルーされ、早期に対応する機会を失い、専門医に辿り着いた頃には、アトピー性皮膚炎も顕在化し、食物アレルギーもできあがっているという状況なのだろうと思っています。

これでは、食物アレルギーの発症予防なんてできっこない訳です。

大矢先生のご講演のあと、1人の小児科開業医が質問に立ちました。その先生いわく、赤ちゃんの湿疹はたくさん受診するが、どう見極めたらよいかという内容でした。

日本のアトピー性皮膚炎の診断基準は、「湿疹の存在」、「痒み」、「2か月以上の経過」が必要だとされます。ただ、診断を確定するのに2か月待っていては、その間に経皮感作を起こしてしまいます。

その点、大矢先生は十分承知されていて、「2か月以上の経過」をはずして、「痒み」を重視すべきとおっしゃっていました。そうすべきだろうと、私も思います。なぜなら、当院のデータでは生後3か月の時点で湿疹で受診した患者の3割以上が卵の感作を受けているのですから。

食物アレルギーの発症予防に立ち会えるのは、ほとんどのケースで開業医なんだろうと思います。質問に立った小児科医も、湿疹を様子をみていたら卵が感作を受けていたという経験もあると言っていました。私から言わせれば、アトピー性皮膚炎の見逃し、経皮関させてしまったということだろうと思います。

学会にも参加しないような開業医が多い中、“乳児湿疹”と決めつけ、アトピー性皮膚炎の治療に結びつけられない小児科医、皮膚科医がいかに多いことか。残念ながら、食物アレルギーは今後も増え続けるのだろうと危惧しています。