この場でいつも言っているように、皮膚から食べ物が入って食物アレルギーを引き起こします。
これは「経皮感作」という現象なのですが、私の中で「いかに経皮感作を抑えるか?」という大きな課題があります。
これには2つのパターンがあると思います。私の研究によると、経皮感作は生後3、4か月で3割超、生後5、6か月で6割強が起こっています。つまり、超早期に抑えるように気をつけなければなりません。
その事実を踏まえると、1つめは、生後1、2か月のうちに対応に乗り出すパターンが想定されます。2つめは既に経皮感作を受けてしまっているパターン。
そりゃそうですよね。「もう経皮感作を受けてしまっているので、卵は除去してください」と言われては、元も子もないでしょう。例えば、卵白がクラス3に上げっていても、アトピー性皮膚炎の治療を行うことで、クラス2に下がってしまうこともよくあります。経皮感作を受けたあとでも、感作を減らすことは可能です。
いずれにしても、これまで食物アレルギーは「いかに食べさせるか?」のみを考えていたのに、降って湧いたように、アトピー性皮膚炎の治療をいかにしっかりと行えるかがカギになっているのです。
ぜんそくや食物アレルギーにこだわる小児科医は少しはいますが、本気でアトピー性皮膚炎の治療に取り組んでいる医師は極めて少ないのではないでしょうか?。
その理由は、ステロイド軟膏の副作用が気になり、使い切れない医師が多いものと思われます。それと、何と言ってもアトピー性皮膚炎の湿疹は非常にねちっこいということでしょう。
多くの患者さんが経験済みのことでしょうが、ステロイド軟膏を塗ると湿疹は軽快するが、やめるとすぐにぶり返すということです。
以前、アトピー性皮膚炎と診断した赤ちゃんの顔に湿疹があるので、顔にしっかりステロイド軟膏を塗ってもらったら、首や胸に湿疹が急に増えるということを経験していました。これは、もう何度も何度も経験しているのです。
これは何故だか分かりませんでしたが、ある日本の第一人者の先生の話を聞いて、「そうだったのかぁ~」と心底納得したことがあります。
つまり、アトピー性皮膚炎の湿疹は、“逃げる”のです。顔を集中的に治療すると、アトピーの湿疹は安住の地を求めて、他の場所に移動するということなのでしょう。
要するに、アトピー性皮膚炎の湿疹のところばかり塗っていては、あっちに塗ったら、こっちに逃げて、こっちに塗ったら、そっちに逃げて…と堂々巡りを繰り返してしまうということです。
「身体全体に塗り、逃げ道を失くし、皮膚の炎症を根本的に弱らせる」、これがアトピー性皮膚炎治療の極意なんだろうと考えています。