この場で、経皮感作のことはよく書いています。
「茶のしずく石鹸」の騒動で証明されたようなものですが、これには私も本当に驚かされました。
イギリスのラック先生が、皮膚から食べ物が入るとアレルギーを引き起こすと主張し、先の騒動でより確実なものになったと言ってもいいでしょう。
ラック先生のスゴいところは、経皮感作のことだけでなく、口から入ったものは“受け入れる”と言ったことだと思っています。つまり、「食べて治す」という考え方も取り入れているのです。
それ以来、経口免疫療法が台頭し、除去が唯一の治療だった食物アレルギーの対応が、食べさせるという方向にシフトしていったと捉えています。
それまでの食物アレルギーの治療といったら、ひたすら除去でした。そう言うと、ネガティブな風に聞こえるでしょうが、3大アレルゲンといわれる卵、乳、小麦については、小学校くらいまでに8割は治るとされていました。
どうなんでしょう?。近頃はなるべく食べさせる方向性が示されていますが、敢えて食べさせると、アレルギー症状を引き起こす患者さんも存在するはずです。患者さんも、できれば症状は起こしたくはないはずです。
食べさせない方がいいのでしょうか?、食べさせた方がいいのでしょうか?。学会はちゃんとデータを示すべきだと思っています。食物アレルギーの研究をし慣れている訳ですし、研究費ももらっているはずですから。
現在の学会の方針は、“必要最小限の除去”。卵焼きを食べると症状を起こしてしまうが、卵入りのクッキーを食べて何ともないのであれば、それは除去する必要はないというものです。
食べさせたらいいのか、どうか曖昧な状態になっているかのようです。
少し前にも触れましたが、学会は、卵は卵1個の1/32個、牛乳なら3ml相当を食べられないのなら、完全除去を推奨すると言っています。
確かにこれくらいが食べられないのなら重症な部類に属するのでしょう。でも、卵1/32個、牛乳3mlも食べられない患者さんであっても、何らかの卵、乳成分を摂らせていた方がいいのだろうと考えていますし、当院ではそれ以下の量で食べさせるようにしています。その枠決めが本当だろうかと思っている私がいます。
学会は、論文で立証されたものを根拠にガイドラインを作っています。根拠がないと、立ち止まって動こうとしないという立場なのかもしれません。食物アレルギーは「食べるな」と言っていた時代から、「食べさせた方がいい」と180度方向性が変わってきたので、混乱するのも分かるし、証拠の論文が集まってから学会としての方針を決めるのが、数年遅くなるのかもしれません。
ただ、茶のしずく石鹸騒動から7、8年経つでしょうか?。それ以前に冒頭のラック先生が学説を主張されています。
何か食物アレルギーの方針が決まるのが遅いと思ってしまうのは、私だけでしょうか?。