当院で診ていた患者さんが、市外に転居されることがあります。
かなりの割合で、引き続き当院に通院してくださいます。有り難い話だと思います。
ある患者さんが、新潟市に引っ越しました。その後も遠路遥々受診してくださっています。ただ、風邪とかちょっとした場合は、近所の小児科にかかることになります。
今回の小児科は、小児科の専門医ですが、アレルギーに関しては専門医ではありません。医院の看板に「小児科・アレルギー科」と書かれていても、ほとんどの場合、アレルギーの専門的なトレーニングを受けたアレルギー専門医という訳ではないのです。
もしかしたら、親御さんには分かりにくいところでしょう。小児科の専門医だから、アレルギーも多く診ているだろうし、アレルギーの分野も詳しいはずと思いたいのは分かります。かかりつけ医から自信満々に言われたりすると、素直に受け入れるものです。
敢えて言えば、多くのケースでその期待は裏切られます。周囲をみていて、ぜんそく、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーをまともに診療できている「小児科専門医(アレルギー非専門医)」はいないのです。
ぜんそくを“風邪”、アトピー性皮膚炎を“乳児湿疹”と区別できないくらいですから、特に近年で大きく変わってきた食物アレルギーの分野に対応できる医師はほとんどいません。
ちなみに今回の小児科医は、風邪でかかっただけなのに、半ば強引にアレルギー採血をされ、ソバとピーナッツの完全除去を指示してきました。大豆も検査上は陽性だったので、「枝豆は毎日食べなければよい」と言われたようです。
食物アレルギーは当院で診ていて、私も除去するものはないと考えていたので、今回の完全除去騒動は青天の霹靂でした。
お子さんもまだ小さいため、ソバやピーナッツはあまり食べたことがないのですが、口にしていなかった訳ではないようです。ちなみに、以前の当院の検査で、ソバもピーナッツも陰性を確認しており、除去する根拠はないと指導していました。
結局、当院でアレルギー採血をし直させていただくことになりました。検査法が当てにできない方法だったからです。とんだいい迷惑でしょう。
アレルギー専門医なら、採血をして、ソバやピーナッツが陽性なら、負荷試験を行うと思いますよ。検査だけで、完全除去と言うのは理論的でないことを知っているからです。
「小児科専門医、アレルギー専門医」という肩書きの小児科医がベストでしょうが、そういう小児科医は、全国的にもかなり少ないのが現状です。「小児科医、アレルギー非専門医」という小児科医がほとんどです。ごくごく一部に適切なことをやっている小児科医もいますし、アレルギー専門医であっても、面倒くさがって真面目に取り組んでいない小児科医もいます。
アレルギーの分野は匠の世界だと思っており、なかなか極められないけれど、挑戦するだけの価値のある道だと思っています。
普段、この場で書いていることが、アレルギー専門医としての真っ当な方針だと思っていますので、かかりつけ医がどういう医師なのかを判断する上で、参考にしてみていただければと思います。