昨日、イクラがクラス2のお子さんに、負荷試験を行いました。
食物アレルギー診療ガイドラインによると、イクラの負荷量について記載がありません。ですので、当院では独自に負荷量を決めて負荷試験を実施しています。
魚卵では、イクラとタラコでの負荷試験が多いですね。過去の実績からは、タラコは焼きタラコを使っており、これまで症状の出た人はいませんでした。一方、イクラは生のまま負荷しますので、検査が陽性だと75%の確率で症状が出ています。
今回の患者さんは、クラス2だったので、症状が誘発される可能性は高いということになりますよね。
イクラは、1粒食べただけでも強い症状を引き起こすことがあるので、初回は1粒をなめて口から出してもらうようにしています。何も起きません。
今度は1粒食べる、3粒と増やしていきます。全く症状が出る気配はなく、美味しいとさえ言ってくれています。
いつもの私なら、どんどん増やしていくところでしょうが、ある程度のところで終了としました。イクラの軍艦に載った量の半分くらいでしょうか?。
その心は、どんどん負荷量を増やしていくと、アレルギー症状を起こす可能性が高いこと。起こせば、本人にも親御さんにも「イクラは怖い」と恐怖心を植えつけてしまうからです。
上手く食べさせれば、症状を起こさないのに、今回は行けそうだと、イケイケドンドンで食べさせるような無理はしたくありませんでした。
食物負荷試験は、十分量を摂れるかどうかシロクロを付けるための検査だと多くの方が捉えていると思っています。アレルギー専門医もそうでしょう。
食物アレルギーは、「固定相場」だと考えている人も多いと思います。つまり、食べられるかどうかは、患者さんによって決まっており、十分量を負荷して区別を付けるという考え方です。
最近、私は「変動相場制」ではないかと考えています。少し食べさせているうちに、いき値(症状の引き起こされる量)が上がるという捉え方です。要は、少し食べているうちに、いき値が上がり、もっと食べられるようになると考えています。
であれば、負荷試験で無理をして、強い症状を起こさせるのは、間違いではないかと思うのです。患者さんに恐怖心を与え、除去を続けることで、更にその食材への過敏性を増してしまう恐れがあると考えています。
ですから、症状が起こる確率75%の今回、ある程度食べられることを確認したところで、余力を持って終了とし、家でもその範囲内で食べ慣れてもらう作戦を取ったという訳です。
もし、私の考える「変動相場制」なら、負荷試験の在り方を見つめ直さないといけないと思っています。世の中には、無茶をした負荷試験をしてアナフィラキシーを起こすケースはかなりあると思います。意外にも専門病院で多いのだろうと思います。
ガイドラインのお陰で、負荷試験が広まってきたのは有り難いのですが、そろそろそのやり方を成熟させなければいけない時期にきているのだろうと思っています。