小児科 すこやかアレルギークリニック

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負荷試験の質
2018年09月13日 更新

昨日、負荷試験は、“食べられないことを証明する”検査ではないと書きました。

負荷試験を行い、増量する中で途中で症状が出たとします。それで卵や乳を完全除去と判断するのは、間違っていると思います。

食べられた量から、食べられるであろう量を推定し、症状なく食べさせていくべきだろうと考えています。

専門病院でも、結構乱暴な負荷試験を行い、完全除去などと指導されているのを見ると、悲しくなります。“食べられないことを証明する”検査として、負荷試験が活用されているからです。

負荷試験をいかに食べさせるかという命題のための検査と捉えると、見方が変わってくるはずなんですよね。

負荷試験をやる場合、私は初回が一番緊張します。初回の食べさせる量の設定を失敗すると、即中止となり、どれくらい食べられるかどうの判断が難しいからです。

これは過去に起きた症状や、抗体価をみながら、初回量を設定しています。逆に、専門病院や大学病院の陥りやすいミスと言ってもいいと考えていますが、プロトコールに従わせることが問題になることもあります。

プロトコールとは、負荷試験を行うにあたり、卵や乳、その他の食材で、初回負荷量が決まっているパターンです。本当なら、重症度により変えなければいけないと思うのですが、研究が目的というところもあるのでしょう。世の中には、超重症の患者さんもおり、何でもパターン化していいものではないと思うのですが…。

初回に食べさせることで、症状を起こすことは避けるべきです。負荷試験をやってくれる医療機関が増えているのは有り難いですが、もし初回で症状を起こす頻度が高ければ、やり方自体に問題があるのだろうと思います。

負荷試験はやればいいという訳ではなく、これからは質にも目を向けるべきでしょう。その医療機関の負荷試験を「安全か、危険か」、要するに「上手か、下手か」を区別するポイントを挙げたいと思います。

以前から言ってきたことを含めると、「アナフィラキシー発生率」。負荷試験をやる度にアドレナリン注射をよく使うのであれば、危険な負荷試験を行っていることになります。

似たような意味合いでしょうが「負荷試験の陽性率」。アドレナリン注射を行わないまでも、症状を起こしてしまえば、患者さんは多かれ少なかれ傷つきます。食べたくないと思ってしまいます。医師として、陽性率は極力下げる努力義務があると考えています。

それと、「どんなケースでもプロトコール通り行うか」。プロトコールを守ることで、とても重症なケースに多くのアレルゲンを摂取させてしまうことになりかねず、それには反対です。研究と安全のどっちを取るかという意味合いかもしれません。

あとは、「初回量での陽性率」。これは今日述べた通りです。

以上が、現時点で、私の考える負荷試験の評価ポイントです。これだと、有名な専門病院であっても、優れているとは言えないかもしれません。

負荷試験をやれば、病床稼働率が上がり、病院の売り上げも上がるという理由で、負荷試験をしぶしぶやっているという医療機関もあるかもしれません。負荷試験は、“食べられないことを証明する”検査ではないため、より安全性を上げる必要があります。

そろそろ全国的に、専門病院も含めて、負荷試験の質を評価する実態調査をやったらいいのではないでしょうか?。