「アレルギーをやっています」と言う医師にはタイプがあります。
以前は、ぜんそくに力を入れている医師がそう言っていました。ぜんそく発作を起こし、入院する患者さんも少なくなく、専門的な医療を提供する役目がありました。
以前はニーズがあったのでしょうが、今は入退院を繰り返す患者さんは激減しています。治療法の進歩とガイドラインの普及だとされているようです。
近年、食物アレルギーの患者さんが急増し、食物負荷試験が保険診療で認められるようになり、徐々に食物アレルギーに力を入れた医師が増え始めました。
ぜんそくで入院する患者さんが減り、勤務医である専門医は、経営上も病院のベッドを遊ばせている訳にはいかず、1泊もしくは日帰り入院という形で食物負荷試験をやる施設が一気に増えました。
以前は、学会に行けばぜんそく関係の発表が多かったし、食物アレルギーは“窓ぎわ族”的な扱いでした。私もその頃の状況はよく覚えています。ところが、今や学会は食物アレルギーの発表で溢れ、立ち見が出る程です。
ある意味、ぜんそく一筋という医師が「旧」で、食物アレルギーをやっている医師が「新」と言えるだろうと思います。でも、私が言いたいのは、この“新旧”ではありません。
食物アレルギーの有名な病院も含めて、食物アレルギーしか診ない医師がいます。この人達は「旧」だと思います。「新」はアトピー性皮膚炎も診てくれ、しっかりと治療してくれる医師を指します。
普段書いているように、食物アレルギーは、アトピー性皮膚炎の湿疹から食べ物が入ることで、経皮感作を起こし、発症します。低年齢だと、アトピー性皮膚炎の湿疹を治療すると、既に経皮感作を受けた卵や乳の数値が低下します。確実に食物アレルギーは皮膚とリンクしていると感じる瞬間です。
早期からアトピー性皮膚炎の治療をすると、卵などは上がってこないようです。食物アレルギーしか診ていない医師は結構いますが、それでは片手落ちであって、アトピー性皮膚炎もしっかり治療しなければ意味がないのです。
小児科医にとってアトピー性皮膚炎治療は鬼門です。「得意です」という医師はほとんどいません。ステロイド軟膏の副作用を恐れる患者さんは、少なからずいますが、“ステロイドアレルギー”の小児科医は、世の中のかなりを占めると言っていいでしょう。
つまり、ステロイド軟膏を塗って副作用が出たら困ると、「できるだけ薄く塗りなさい」とか「皮膚がよくなったらすぐに塗るのを止めなさい」とか言います。慢性疾患であるアトピー性皮膚炎はこの程度は治療とは言わないし、すぐに悪化してしまいます。アレルギー専門医であっても、こんな腰の引けた小児科医は多いです。
アトピー性皮膚炎の湿疹に本気で立ち向かったことのある小児科医は、極めて少なく、経皮感作とかアトピー性皮膚炎の重要性が、最近注目されてきたことなので、専門医とは言え、対応ができていないケースがほとんどです。
食物アレルギーの専門医にかかっている患者さんも、自分の主治医が新旧どちらのタイプなのか、よく見極めていただきたいと思っています。