アトピー性皮膚炎の診断基準は、3つの特徴を満たすと定義されています。
湿疹の存在と痒み、2か月以上の慢性の経過となっています。慢性の経過をたどる病気なので、しっかりと見極めて診断しようということで、2か月以上経過をみないといけないことになっています。
正確に診断をつけるということはとても大事なことです。しかし、時間をかけて診断をつけている間にも経皮感作が進み、食物アレルギーが悪化してしまうという側面もある訳です。
実は、いま成育医療研究センターが中心になってパッチスタディという研究が行われています。湿疹のある赤ちゃんを早期から治療して、卵アレルギーが予防できるかを調べる目的で行われます。
アトピー性皮膚炎を判断するのに、“2か月の経過”というのを省いています。先に述べた理由からです。日本のアトピー性皮膚炎の診断基準が厳しいからとも言えるでしょうね。でもこの判定が正直、難しいのではないかと思っています。
この研究法からも分かるように、アレルギーは診断が確定する前からアクションを起こさなければいけないことが分かります。にもかかわらず、昨日も触れたように生後まもない“湿疹”を診る立場にある開業医が、「大したことはない」とか「心配する必要はない」と繰り返しています。みすみす食物アレルギーを作り出している格好だと思います。
いつも言っているように、当院のデータでは、生後3、4か月で湿疹のある赤ちゃんの30%以上が卵アレルギーに傾いています。湿疹が出来立ての状態で、介入していかなければならないことを意味しています。
当院のような田舎の開業医が、今年は10回も多くの全国学会でこの事実を知ってもらおうと、学会発表してきましたが、何の爪痕も残せなかったように感じています。
結局は、大病院の発言力が大きいので、パッチスタディの結果を待つしかないのでしょうか?。ただ、危惧していることがあって、昨年6月に「鶏卵アレルギー発症予防の提言」が小児アレルギー学会から出されましたが、多くの小児科医が本気で理解しようとしていないし、テキトーな対応になっていること。そもそも食物アレルギーを予防したいと本気で思っている医師は、ごくひと握りだけなんでしょう。
食物アレルギーは増え続けているというし、多くの親御さんのほか、園•学校関係者が食物アレルギーを何とかしようと考えていますが、肝腎の医者の多くが「オラ知らね」では困るんですよね…。