小児科医は、子どもの病気、すべてを診なければなりません。
内科医は、呼吸器科、循環器科、神経科、腎臓科、内分泌科、アレルギー科などと細分化されています。病気が様々あって、しかも複雑なため、それぞれの専門家に任せようというやり方をとっています。
子どもの病気は、大人の病気ほど複雑かつ研究も進んでいませんが、医師が1人で子どものすべてを診ることができるという訳ではありません。
実際、小児科医は、普通の熱性けいれんなら対応しますが、けいれんが治まりづらければ小児神経の専門医、血尿やタンパク尿が強ければ腎臓の専門医へ紹介します。心雑音が聞こえれば、心臓の専門医に診てもらうようにしています。
先日、こんなことがありました。以前当院でぜんそくの治療をしていた患者さんが、熱が続き、咳もひどいと久々に受診されたのです。
近くの小児科で風邪と診断され、風邪薬を飲んでいるけれど、熱も咳もひどく、夜も眠れないと慌てて当院を頼ってきた訳です。
アレルギーがあっても、当院に通うのが面倒になって、近くの小児科で済ませようとしている訳ですから、あまりいい気はしませんが、こういうケースって、よくあります。
ひどく咳き込みながら、診察室に入ってきました。実は、その前から診察は始まっています。前の患者さんのカルテを書きながら、その咳の音を聞いていました。痰絡みの重い咳です。そして視線を向けると、熱も続いており、辛そうな表情です。
当院はぜんそくを見逃さないようにしていますが、他の小児科医にとっては難しいようで、“風邪”と繰り返し診断されていることが多いです。今回も親御さんに問診しながら、ぜんそくの咳が見逃されていることはすぐに分かりました。
いつも書いていますが、「咳」はいろいろな病気で起こりますが、普通の小児科医は、ほぼ“風邪”と決めつけています。ぜんそくの咳に風邪薬は効きませんので、風邪というのは誤診であり、よくなるはずはありません。
ぜんそくの咳はすぐに分かりましたが、熱が続いており、プラスアルファがありそうです。熱の続く原因も見極めなくてはなりません。
2歳のRSウィルスと診断された親戚の子と一緒に遊んだそうです。でも、この患者さんは10歳前後であり、普通はRSウィルスではここまで重症化しないはずです。この年代で熱と咳がひどくなる病気といえば…、私の中でマイコプラズマが浮かびました。
マイコプラズマの診断も、小児科医によってはいまだに採血で決めていますが、今はのどを綿棒でこすって診断します。それが診断精度も高いとされています。
結果は、案の定、マイコプラズマが陽性でした。この患者さんの激しく、睡眠障害をもたらす咳の理由は、ぜんそくとマイコプラズマの合わせ技だったのです。
風邪だなんて、とんでもない。風邪薬は全く効かないはずです。それでも医師には、風邪と診断した満額の報酬が支払われます。あってはならないことですが、「絶対に正しく診断して、適切に治療しよう」というモチベーションがなくなるのも、うなづけますよね。
これから分かるように、普通の小児科医は「アレルギー科」と「呼吸器科」の診療が弱いことが多いようです。呼吸器科と言えば、「咳」がメインの症状でしょうが、「咳」とか「アレルギー」といったよくみられる症状は、“風邪”などと決めつけて、延々と様子をみることが少なくないようです。しかもよく見られるので、専門医へ紹介という発想はないようです。
残念ながら、一般小児科医はアレルギーと呼吸器が弱いというのは現実だろうと思っています。


