小児科 すこやかアレルギークリニック

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代わりに実践
2019年03月19日 更新

昨日と似た方向性の話をしようかと思っています。

2015年の成育医療研究センターからの報告になります。アトピー性皮膚炎の患者さんを生後4カ月以前と5カ月以降の2群に分け、ステロイド軟膏をビシッと塗り、その後の経過をみた研究になります。

早期に治療を介入する方は「早期介入群」、生後5カ月以降の方は「介入遅延群」と名付け、食物アレルギーの状態を観察しています。

早期介入群は、半数が食物アレルギーを発症したのに比べ、介入遅延群は、全例が食物アレルギーを発症していました。

世の中には、食物アレルギーを予防したい、アトピー性皮膚炎を早く見つけて、その後のアレルギーを変えたいと1ミリも考えていない小児科医、皮膚科医が大勢います。多分、小児科医、皮膚科医の99%くらいに当たると感じています。

そんな医師にかかっていると、アトピー性皮膚炎が始まっているにもかかわらず、「乳児湿疹ですね。じきに治ります」とか言われて、キンダベートなどの効果の薄いステロイド軟膏を湿疹のあるところだけに“薄く”塗り、湿疹が改善してきたら塗るのを“すぐに止める”という指導をされていると思います。

そもそもアトピー性皮膚炎の患者さんに、こんな治療はありません。攻めの姿勢で、ベタベタ、ギトギトに塗り続け、湿疹をコテンパンにやっつける方法を用います。慢性の、治りづらい湿疹を制するには、これくらいやらないとダメなのです。

ですから、世の中の多くのアトピー性皮膚炎の初期の患者さんは、その後の食物アレルギーの歴史が大きく変わり得るのに、“介入遅延群”となっているばかりではなく、さらに“介入不足”になっている訳です。

こういうことは、学会が大きく声明を出し続けるべきです。「食物アレルギーの運命は変えられる」と。2年前に「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」というものが学会から発表されましたが、発起人の多くが実際にやっていないことなので、腰砕けに終わってしまったように感じています。

生後5カ月以降では、言い方は悪いですが、“手遅れ”と言えます。だって全例が食物アレルギーを発症してしまうからです。

それ以前に何とかしなければ、歴史は変えられないのです。ご希望の患者さんがいれば、協力するのですがね。学会がやらないので、田舎の開業医ですが、代わりに実践しようかと思っています。