この春、東京世田谷にあるSセンターから紹介状を持って受診された患者さんがいました。
Sセンターなんて書きましたが、成育医療研究センターのことです。たまたま上越市に転居されたため、また主治医が私のことをご存知だったため、当院をご指名で受診されました。
成育医療研究センターと言えば、小児アレルギーでは国内最高峰の医療機関です。実際、今回の患者さんは食物アレルギーであり、また経皮感作を起こしたアトピー性皮膚炎もしっかりと治療されていました。
患者さんからすれば、転居で仕方なく受診される訳で、内心がっかりされているかもしれません。あまり落差のある医療はできないし、何とかしなければと気合いは入っていました(笑)。
今回の赤ちゃんは卵や小麦などが陽性で、小麦は負荷試験を行った上で、日頃からそうめんを1センチ食べるという指導を受けていました。
私は、小麦がどれくらい食べられるようになったかを判定するため、小麦の負荷試験をお勧めしました。私の中では、日頃から小麦を食べていれば、もっと食べられるようになっていると踏んでいました。
食材は、そうめんでとも考えましたが、うどんを用いました。持ってこられたのは、私が小学生の頃、給食で出たソフト麺くらいの太さがあります。
最初は0.5センチから食べさせました。太いので、日頃から食べているそうめん1センチよりもかなり多くなっています。何の問題もなく食べ続け、この日は10g食べたところで、終了としました。
いまだにこんな負荷試験をやる医師もいるでしょうが、何としてでも規定の100gを食べさせようとして、過量を摂らせてアナフィラキシーを起こすこともあるでしょう。それでは意味がないのです。日頃から症状を起こすことなく、わずかな量を食べていたので、今回も症状を起こさずに負荷試験を終えることはマストだと考えていました。
そうめん1センチに比べたら、太いうどんを10g食べられ、親御さんも驚いていました。小麦は食べていると、どんどん食べられるようになります。ですから、タイトルのように今回10g食べられたのは、Sセンターのお陰だと思っています。
今回、そうめん1センチと具体的に書いたのは、自宅でマネして欲しいと思ったからではありません。超重症の小麦アレルギーなら症状が出てしまうかもしれず、実際主治医が負荷試験をやった上で、設定していた量なのです。
日頃から1センチ食べていたのは、次回の負荷試験でもっと摂らせるつもりだったのだろうと、前の主治医の先生の気持ちを汲んでの負荷試験を行いました。当院は負荷試験はSセンターさんほど混雑していないので、あれもこれもと他の食材についても負荷試験を行い、食べ進めていくつもりです。
とりあえず上々のスタートを切れて、ホッとしています(笑)。