先週、アレルギー学会がありました。
ある講演の中で、「アトピー性皮膚炎は寛解しており、乾燥肌がある」という表現がありました。私は引っ掛かりを感じてしまいました。
当院のチカラを入れている主な病気は、ぜんそく、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーですが、ご存知のようにどれも慢性疾患です。風邪や胃腸炎などと違い、治りづらいことを特徴としています。
よく書いているように、アトピー性皮膚炎なのに、“乳児湿疹”と診断する小児科医、皮膚科医は全体の90%以上と思われます。
「なぜちゃんと診断されないか?」については、多くの医師がそういうものと捉えているからではないでしょうか。つまり、アトピー性皮膚炎はかなり湿疹のひどい病気であり、この程度は違うだろうと考えているのだろうと推測しています。
経過が長引くと、「アトピーかもね」と言いだす医師も出てきます。ただ、アトピー性皮膚炎には“流れ”があり、成長とともに軽くなっていく場合もあります。意外と落ち着いてくることもあるようです。そうすると、医師は「やっぱりアトピー性皮膚炎ではなかった」と考えるようです。
食物アレルギーの観点から見ると、それほど大した湿疹でなくても、「経皮感作」は受けるので、ひどい湿疹であれば、複数の食品に対しアレルギーを起こすこともありますが、それほどでもなければ、経皮感作を受けつつも、乳児湿疹や乾燥肌と診断されていることもあると思われます。
こういった患者さんは、離乳食で卵を食べて、じんましんが出てビックリして受診されることもあります。そこをクリアしてしまうと、ただの肌の弱い子だと勘違いされたままのこともあるようです。
アトピー性皮膚炎は経過の長い病気であり、冒頭のアトピー性皮膚炎があったが、現在は治っており、乾燥肌の状態であるという表現は違和感を覚えるのです。
最初からアトピー性皮膚炎であり、現在もアトピー性皮膚炎であるということなのだろうと考えています。
これくらいアトピー性皮膚炎の湿疹の見方は、医師によって異なり、誤診も多く、経皮感作も許してしまということなのだろうと思っています。しかも、治っているかどうかの判断もバラバラです。
食物アレルギーを防ぐためには、湿疹ゼロを目指すプロアクティブ治療が望ましいとされますが、病気の捉え方が医師それぞれによって異なり、アトピー性皮膚炎と診断されなければ、プロアクティブ治療は行われないでしょうから、経皮感作は減るはずもないと思われます。治療もバラバラで、過少治療が多い訳です。
適切な対応が増えるためには、診断や治療に大きな壁が立ちはだかっているようです。食物アレルギーが増え続けるのは、こんな側面もあるのではないでしょうか?。