ステロイド軟膏、何かと誤解の多い薬だと思います。
昨日も触れたように、ステロイド忌避という態度を取る患者さんは一部いらっしゃいます。
20年くらいは結構目立ったのですが、最近はだいぶ減ってきたように思います。それは、1990年代にステロイド軟膏は使うべきでないと結論づけた当時の報道番組の影響が大きいと言われています。
大学病院の皮膚科でさえも、ステロイド推進派と否定派の2つに分かれ、初診時にステロイド治療を勧められて、次回再診した時に、別の医師がステロイドの中止を勧めたなんて話も聞いています。アトピー性皮膚炎治療がかなり混乱した時代が長く続いたのも、事実でしょう。
さすがに、それから時代がめぐり、今ではステロイド治療の使用を拒否する親御さんはかなり少なくなりました。
仮にステロイド治療を拒否する患者さんに巡り合っても、私の場合は、学会の推奨するプロアクティブ治療を勧めるくらいしかできません。アトピー性皮膚炎の皮膚の炎症を抑え込み、安定させるのは、基本的にステロイド軟膏のチカラを借りるしかないからです。
今回の患者さんと接していて気になった点が、3つあります。まず最初に、前医でステロイドの処方を受けていたのですが、あまり効いておらず、ステロイド軟膏の使用に不安を感じられていたことです。
慣れていない医師は、ステロイド軟膏をおっかなびっくり処方していますので、それでは効くものも効きません。敢えて言えば、医師が適正に治療できないことが、患者さんを不安にさせているということのようです。
今回、キッチリを塗っていただき、ほぼ100点という湿疹のほとんどない状況を1週間後に作ることができました。
それに伴い、痒みもなくなり、機嫌もよくなりました。もちろん、見た目も「ようやくうちの子らしくなった」という状況かもしれません。
皮膚は、ほぼ100点ですが、もう少しステロイド軟膏はしっかり使ったのちに減らそうと考えています。こうして、皮膚症状を安定するクセをつけたい訳です。
決して少なくない医師が、効かないような弱いステロイド軟膏を処方し、湿疹のあるところのみに薄く塗って、数日で塗るのを止める(保湿剤に切り替える)よう指導しています。中途半端に使って、悪化しやすい状況にしておいて、予定通りにぶり返させていると言えなくもありません。
別の言い方をすれば、医師が中途半端に治療して、悪化を繰り返させ、さらにアトピー性皮膚炎という病気を制御不能に向かわせているのだろうと考えています。
これを機会に、一部の専門医が行なっているアトピー性皮膚炎治療の戦略について理解していただきたいものだと思っています。気になった残りの2点は、後日触れようと思います。