先月、“湿疹”の確か4ヶ月の赤ちゃんが当院を初診されました。
今の日本のルールでは、アトピー性皮膚炎はじっくりと診断しましょうということになっています。それが故に、乳児の湿疹をみると、多くの医師が“乳児湿疹”と診断している訳です。「こんなのはアトピーじゃない」と。
最初から決めつけては、早期発見なんてできる訳はありません。開業医では、こういう患者さんは多いし、特に当院は口コミか何かで、患者さんが集中してしまうようです。
逆に、目が肥えて、だいたいアトピー性皮膚炎の診断がつくように思っています。その診断に強力に後押ししてくれるのが「TARC」です。
例えば、今回の患者さんのTARCは11867という値でした。生後6ヶ月以降の赤ちゃんですと、1367未満という基準値が存在します。生後4ヶ月の基準値は存在しない訳ですが、さすがにこれだけ高いと、アトピー性皮膚炎と診断しても差し支えはないと思います。
早期介入の目的は、食物アレルギーの予防と、アトピー性皮膚炎の根治です。これまでの経験上、「経皮感作」の予防は結構難しいけれど、早期から食べさせていけば、予防は難しくありません。また、アトピーを治そうという医師はほとんどいないでしょうが、私は本気です。
前も書きましたが、早期介入した1、2ヶ月の乳児を数十人経過を追ったら、卵アレルギーは相当数いて、乳や小麦は少数が陽性でした。そんな中、1人だけピーナッツとイクラ、タラコに感作されたお子さんがいました。その子は生後2ヶ月の時点でTARCが23000もありました。
これは由々しき事態と考えるべきですが、乳児の湿疹をみても、多くの医師がTARCを調べようともしないのは、とても不思議なのです。
TARCが10000を超えていると、とんでもなく重症なアトピー性皮膚炎と思いがちですが、それほど湿疹がひどくないこともあります。
赤ちゃんのアトピー性皮膚炎の治療は、顔は「ロコイド」などの弱いステロイド、体は「ボアラ」や「リンデロン」などの強いステロイド軟膏を使うことが多いと思います。
湿疹の性状で弱いものか、強いものかで治療するか判断しています。この患者さんは、TARCがこんなに高いにも関わらず、弱い方のステロイドを選択しました。「そんな中途半端なことをして…」と言われてしまいそうです。
これもほとんど行われていないことですが、ステロイドの選択が適切だったかどうかの答え合わせは、赤ちゃんにはちょっとかわいそうですが、TARCを再検させてもらえば分かると思っています。
結果を示します(画像)。右が古い方で、先月の初診時、左が今月の再検のデータを示します。ロコイドクラスでも十分過ぎるほどの効果が得られる場合もあることが分かります。
ちなみに、卵の感作の程度も1ヶ月ほどでクラス4から3に低下しています。卵に感作を受けたことは仕方ありませんが、生後6ヶ月になったら、卵の負荷試験をする予定です。当院の今のやり方でも、ほぼ100%治ると思います。
いかがでしょうか?。食物アレルギーを予防し、アトピー性皮膚炎の根治を狙う「時代」に差し掛かっているのを感じられませんか?。
