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エビデンス
2019年10月26日 更新

最近は、医学以外でもエビデンスという言葉が使われるようです。

医学の場合は、「エビデンス ベイスド メディスン(EBMと略される)」、要するに医学的根拠に基づいた医療をする必要があるとされています。他の分野の職人技のように「経験」や「勘」が重視されるのではなく、客観的な科学的根拠の方が重要だということです。

そりゃそうですよね、医師の経験は人によりけりですから、専門的で十分な「経験」を積んできた医師と、専門的でない過小な「経験」を積んできた医師では言ったり、やったりすることが異なる可能性があります。

その結果、日本の第一人者がその疾患に対する診断や治療、注意点を書き記した「ガイドライン」がいろいろと作られています。そのガイドラインには、従来の「経験」や「勘」というのはほとんど排除されているようです。

さて、アトピー性皮膚炎をいろいろと診ていると、水イボを合併しているお子さんが少なくないことに気づきます。アトピーは痒いので、皮膚を掻き壊したところから水イボウィルスが入り込めば、水イボに感染してしまいます。

私は小児科医なので、子どもの病気はどれも治せるものは治したいと考えて、日々診療に取り組んでいるつもりです。最近書いているように、治りにくいとされるアレルギー疾患であるぜんそくやアトピー性皮膚炎、食物アレルギーでさえもです。

水イボも、どうしたらよくすることができるかと考えています。丁寧にみていると、水イボは放置して治っていくものはほとんどなく、ゆっくり増えていくものが多いようです。爆発的に増える人もたまにいます。

水イボの対応を記したガイドラインはないようですが、日本小児皮膚科学会のホームページには、早めに取り去るのが望ましいと記載されています。最近は麻酔のテープがありますから、痛くないようにした上でピンセットで取ってしまうことが推奨されています。

その患者さんが、放置したら爆発的に増えるかどうかは分かりません。百個以上あるような人は、そこまで増える前に何とかすべきだったと思います。そうなると、少ないうちに取り去るという学会の方針は、とても現実的だと思っています。

ところが、多くの医師が「放っておけば治る」と言っています。私の経験上、放置すれば、増える確率が相当高いにも関わらずです。

基本的に取るべきと考えていますが、数が少なければ取るが、増えたら取らないとか、目の周りは取らないとか、言っていることに一貫性のない医師もいます。

何十個にも増えた水イボを取るのは面倒ですし、時間もかかります。子どもも泣くことが多いので、厄介といえば厄介です。取らないという方針の方が、医師にとって都合がいい訳です。

そのせいか、先輩医師に「水イボは取らない」と教えらた若い医師も「取らない」と言うようで、「(痛くないようにして)取る」という方針が広がっていきません。

水イボは、一度取ったとしても、目に見えないような小さなものは取りきれないので、しばらくするとまた出てくることが多いです。しかし、何度か繰り返すと根絶することができます。当院では、何度も経験しています。

小児皮膚科学会も推奨していますし、エビデンスに沿った治療だと思うのですが、90%以上は放置されているようです。

医療の世界では「エビデンスに沿った、患者さんに寄り添う医療を」なんて言っていますが、言っていることとやっていることが異なる代表のひとつが水イボの治療なんだろうと思っています。