小児科 すこやかアレルギークリニック

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91.9
2019年11月19日 更新

まだまだ、日本は除去ありきだと思っています。

何の話かといえば、食物アレルギーの対応のことです。先日、1歳のお子さんに卵焼きの負荷試験を行いました。

タイトルの「91.9」は卵白の抗体価を表しています。クラスでいうと、抗体価が100以上がクラス6なので、その一歩手前。クラス6に近い、クラス5ということになります。

学会の推奨するプロバビリティカーブによれば、症状が誘発される可能性は、ほぼ100%となります。多くの医師が「どうせ食べられないから、除去しましょう」ということになります。

こういうところが専門医としての腕の見せ所なのですが、アレルギーに詳しくない医師は、「誰が診ても一緒」と考えてしまうようです。

となると、専門医に紹介しようとすら考えません。だって、学会の推奨する方法で、ほぼ100%食べられない訳ですから。

学会は、専門病院に紹介しろと繰り返しますが、プロバビリティカーブを前面に押し出している限りは、専門でない医師の理解を深めることは難しいのかもしれません。

ちなみに、この卵白の抗体がクラス5の患者さんは、卵焼き1個を何の問題もなく完食しています。

種明かしをすると、卵の加工品の負荷試験は済ませていて、食べ慣れさせることで「いき値」を上げ、卵焼きをクリアするだけの下準備は進めていました。そういう経験を何度もしていると、私はプロバビリティカーブは活用していないし、「いくらクラス5だろうと、卵の加工品くらいは食べさせられるでしょ!」って思ってしまうのです。

その積み重ねというか、下準備を進めると、クラス5の患者さんでも、とても重症化していなければ、食べられてしまうんですね。

多分、非専門医は卵がクラス5の患者さんはガチガチの経口免疫療法をやって、ようやく卵を食べられるようになると考えているのかもしれません。「そこまでしなくても、とりあえず除去で…」って感じなのかもしれません。

当院のような田舎の開業医でも、段階的に食べさせることで、別に患者さんを危険にさらすことなく、余裕で卵焼きを食べられるようになってしまうなんて、多くの医師も患者さんも思っていないことでしょう。

個人的見解ですが、プロバビリティカーブにあるように、抗体価が高いと食べられないと考える人があまりにも多いことが、食物アレルギー診療の邪魔になっている可能性があるのだろうと思っています。