小児科 すこやかアレルギークリニック

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2019年12月07日 更新

先日、8ヶ月の乳児が珍しく紹介されてきました。

紹介状には、アトピー性皮膚炎があり、検査をしたらTARCが7000を超えており、卵白とオボムコイドが陽性であり、親御さんが当院での外来での負荷試験を希望されたと書かれていました。

TARCは、アトピー性皮膚炎の湿疹を数値化したものです。つまり、湿疹がひどければ数字は高くなり、軽ければ数字は低くなるという代物です。基準値が1367なので、7000オーバーなら明らかに異常です。

それを根拠にアトピー性皮膚炎と診断したようです。全身ガサガサで、アトピー性皮膚炎の存在は明らかでした。さらに卵も陽性であり、経皮感作してしまったのでしょう。

いつも書いているように、アトピー性皮膚炎のことをほとんどの小児科医、皮膚科医が“乳児湿疹”と診断しています。

これも常で、過小診断、過小治療。ビックリするくらい弱いステロイド軟膏が出されており、薄く塗って、すぐにステロイドを止めるよう指導されていることがほとんどです。

過小に診断している訳ですから、「強い治療は必要ない」と過小治療になるのは分かります。ただし、今回はアトピー性皮膚炎と診断されていました。

にも関わらず、治療は多くの小児科医、皮膚科医がやっているような“過小治療”が行われていました。要するに、アトピー性皮膚炎の治療をちゃんと理解している医師は、とても少ないのだろうと思います。

ちなみに、ステロイド軟膏は皮疹を一気にやっつけるだけの強めのものを選択し、しかもベッタリと広範囲に塗って、こてんぱんにやっつける方法です。

よく医師の言う「できるだけ薄く塗って、皮疹が消えたら塗るのを止める」と言う指導は、実はアトピーのものでは有り得ないのです。

今回は、アトピー性皮膚炎と診断されていたにも関わらず、適切に治療されていませんでした。多分、負荷試験がメインの紹介だったのだろうと思います。

しかし、この状態では負荷試験すらできません。だって、湿疹が何一つ改善していないのです。

卵の負荷試験を行い、皮膚に症状が出たとしても、皮膚はガサガサで、不機嫌に掻きまくっています。これでは、食べて皮膚症状が出ているのか、アトピー性皮膚炎の状態が悪いのか区別ができません。

0歳で卵白が陽性で、負荷試験をやろうとすることまでは「正解」です。しかし、その先が不正解ですし、どういう食材を、どのように食べさせていくかもちゃんとしたルールはなく、この医師は自分でやるとしたら、どのようにやるつもりだったのでしょうか?。

日本のアトピー性皮膚炎治療のスタンダードは、この程度と思われ、過小治療で湿疹が消えることなく、患者さんが湿疹を掻いては悪化し、悪化しては掻くということを繰り返しているのが現状でしょう。

ガイドラインに記された「プロアクティブ治療」が多くの患者さんに行われるようになるには、まだまだ時間がかかりそうです。