小児科 すこやかアレルギークリニック

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2番目にしてはいけないこと
2020年04月06日 更新

今日は、食物アレルギーの話題です。

私は13年前の今頃は、病院に勤務しながら開業の準備をしていたんだったかな?。勤務医時代は、アレルギー外来に患者さんが押し寄せ、予約が取りづらい状況となり、午前中の一般外来にまでアレルギー診療を求めて受診される患者さんが出てきました。

であれば、開業医となれば、「毎日アレルギー診療ができる!」と思って起業を思い立ちました。専門病院は重症を取り扱うことが多いですが、開業医は軽症から重症まで幅広く診ることができるのが強みだと思っています。

病院勤務だと異動はつきものです。一方、開業してしまうと、言い方は変ですが、“逃げ場”はありません。幸い、開業してからの12年余りの間、どうしたら治すことができるのかとずっと考えながら、食物アレルギーに取り組んできました。

私の恩師が、アレルギー採血の数値が高くても、加工品を食べさせるという、当時では珍しい(今では少しずつ浸透してきましたが)方針だったことが幸いして、とにかく少しでも食べさせるという方針を貫いてきました。

そうすると、前医では除去と言われ、全く食べることができなかったのに、少しでも食べられることが分かり、うれしそうに帰っていかれる親御さんの笑顔が忘れられず、そのためだけに頑張ってきたと言っても過言ではありません。

食物アレルギーのガイドラインには、症状が出れば1年は除去し、その後、負荷試験を検討すると書かれています。確かに周囲では「1年は除去しなさい」なんて声が聞こえてきます。

先々月の学会でも発表してきましたが、乳児が家で卵を食べて、症状をきたした人のうち、3分の2は卵料理でした。つまり、卵黄から食べさせていたものの、卵白をあげた量が結果的に濃くて、アレルギー症状が誘発されてしまったのです。

要するに、卵黄や卵ボーロなどは食べて大丈夫なのに、「向こう1年は除去」となってしまうのです。昔から食べて何ともなければ、食べさせてもいいというスタイルだったので、卵料理を食べて症状が出ても、それ以前に食べていた卵黄や卵ボーロなどは除去にはしていませんでした。

そういう方針で経過をみていると、そういう人ほど順調に治っていくようです。さらに、先日の学会では、(除去を続けている)1年もあれば、半数近くは卵焼きを食べることができるようになると言ってきました。

そもそも、「向こう1年の除去」とは、1989年のアメリカの食物アレルギーの権威の論文が根拠になっています。もう30年以上経ち、食物アレルギーもだいぶ解明されてきています。30年前の対応と同じで良いはずがありません。

ということで、食物アレルギーの「2番目にしてはいけないこと」とは、やみくもに“1年の除去”をすることなんだろうと考えています。