ここ数ヶ月、「医療崩壊」という言葉をよく耳にすると思います。
以前も触れましたし、多くの方々が、新型コロナウィルスにかかった患者さんが、一度に病院に殺到しては対応できない、要は病院のキャパシティを超えてしまうことだと理解されていると思います。
ベッドの数もそうですが、マンパワーという言葉もあるように、その病院の職員の数の制限もあり、それ以上のことはできないし、一時的に無理をしても、長期化してしまうと対応は困難になります。
また、各地域にある新型コロナウィルスにかかった患者さんが入院できるベッド数は、限りがあります。成人であればガンだったり、心筋梗塞、脳梗塞などの病気にも対応しなければいけないため、同時多発的に新型コロナウィルスの重症患者さんが入院しては、すぐにキャパシティオーバーになってしまいます。
ですから、今もそうですが、これまでも、いわゆる「医療崩壊」っていうのは、いつ起きてもおかしくなかったのかもしれません。
ただ、崩壊の仕方って、こういうパターンだけでしょうか?。
昨日あたりもテレビで報道されていましたが、発熱患者さんが救急車を呼んでも、受け入れ先がすぐに見つからないという問題も起きているようです。
要は、一度引き受けてしまって、その患者さんが新型コロナウィルスにかかっていたとすると、院内感染を引き起こすため、下手に引き受けられないということのようなのです。
病院で気安く新型コロナウィルスのPCR検査ができないため、とりあえず入院させても、結果が判明するまでの間に院内感染を起こしてしまえば、病院の評判はがた落ちとなってしまいます。
本来、病院は1人でも患者さんを受け入れて、ベッドを埋まるようにすれば、経営も安定します。しかし、新型コロナウィルスに関しては、メリットよりもデメリットが大きいため、「感染の可能性があれば受け入れない」という選択をしてしまう病院が多いということです。
基本的に、病院は患者さんの要請を断れず、受け入れなければならないはずです。多くの病院がメリット、デメリットを天秤にかけた上で救急患者さんを断っているのだとしたら、これも「医療崩壊」と言えるのではないでしょうか?。
これは、東京など新型コロナウィルスの患者さんが急増中の地域だけの話でしょうか?。
例えば、当地であれば、発熱、咽頭痛の成人の患者さんが、ある内科を受診しようとしたら、受診を断られたというのです。そう、開業医でも、発熱の患者さんが「新型コロナウィルスだったがどうしよう」として受け入れ拒否をしているようです。
こんな地方のクリニックであっても、新型コロナウィルスの可能性を考え、正当な理由がなく受診を拒んでいるようです。下手に診察して、“濃厚接触者”になりたくないのでしょう。
かかりつけ医であれば、その患者さんを救えるのは、その医師だけでしょう。患者さんからの要請を断るのは、これも医療が“崩壊”していることを表しているのだろうと思っています。
ちなみに、この成人、当院が引き受けました。「小児科なのに、大人も診るの?」とお思いでしょう。誰も診ようとはせず断るので、例外的に当院が手を挙げたということです。
実は、当院に関係のある人物でした。アトピー性皮膚炎で診ているお子さんのお父さんだったのです。更にもう一つ、理由があります。
実は、お子さんが発熱と咽頭痛でその日に当院を受診し、溶連菌感染症だと診断していたからです。今は溶連菌やインフルエンザの検査も断る医療機関が多くなっています。父も全く同じ症状だったので、同じ溶連菌感染症の可能性が高いと踏んだのです。
であれば、今は熱が出れば、周囲が新型コロナウィルスを疑うようなご時世です。溶連菌であることを立証できれば、親御さんは救われるはずです。
そういう理由で引き受け、そして溶連菌が出ました。今は適切に治療したことで回復し、仕事に励んでいらっしゃいます。
自分のしたことを美化するつもりはありませんが、誰も“火中の栗を拾う”ことを避け、困り果てている患者さんは全国にとても多いと思います。
かかりつけ医として責任を果たそうとしない医師が少なくないのだろうと思っています。新型コロナウィルスの蔓延化とともに、これからは日本の医療がもっと“崩壊”するのだろうと予想しています。