食物アレルギーの対応として、「家で少しずつ食べせなさい」と言う医師がいます。
それまでは「除去、除去」と言っていたのに、最近は“食べて治す”という雰囲気を察知すると、無責任にもそう言うようです。変わり身が早いんですね。
先日、こんな患者さんが当院を受診されました。大豆製品を食べると、1、2時間後に嘔吐を繰り返すのだそうです。
一般的に、こういった患者さんは普通の小児科ではもはや対応できないと思います。嘔吐を繰り返す時点で、胃腸炎という病気しか思いつかないようです。
以前は、大豆アレルギーはそれなりの頻度で見られたようですが、最近はほとんど見かけません。しかも、食物アレルギーと言えば、蕁麻疹など皮膚に、そして咳など呼吸器に症状が出るのが普通です。
少し時間が経ってから、嘔吐という症状しか見られないと、多くの医師には“胃腸炎”にしか見えないようです。
冒頭の話からすると、「食物アレルギーなのに、家で少しずつ食べさせろ」って言われたんでしょう?と勘のいい人なら、そう考えるのだろうと思います。
実は、違います。園からそう言われて、食べさせてしまったのです。
案の定、時間が経ってから嘔吐を繰り返しました。ハッキリ言えば、園の無責任な言動で、かわいそうな目に合わせてしまったのです。
これは、消化管アレルギーという最近注目の食物アレルギーです。先日届いた学会誌にも書かれていましたが、大豆の消化管アレルギーの患者さんに、豆腐の負荷試験を行い、ショック状態に陥ってしまったそうです。
多くの人が食物アレルギーの通常のパターンでアナフィラキシー ショックに至るのは想定していると思いますが、この消化管アレルギーでショック状態になることもあるようです。
嘔吐を繰り返し、点滴処置が必要になります。ある意味、食物アレルギーの通常の症状よりは厄介かもしれません。にも関わらず、園側の勧めで、こんな事故が起きてしまいました。
消化管アレルギーは結構見かけます。大抵が、“胃腸炎”としか診断されていません。危険な病態として、多くの人に認識しておいていただきたいと思っています。


