食物アレルギーの治療は、「除去」と「待ち」という方針なんだろうと思います。
食べると、アレルギー症状を引き起こしてしまうので、冷却期間をおいて、食べられるようになるのを待つという格好だと思います。
ちょうど人間関係と一緒ですよね?。喧嘩して仲違いしてしまったけれど、ちょっと冷静になる期間をおけば、また仲良くなれることもあります。
ですから、多くの患者さんがタイトルの〇〇のところに、「待てば治る」という文字が入って欲しいと思っているのだろうと思います。
残念ながらアメリカのデータですが、4歳から14歳まで2年ごとに小麦アレルギーの治り具合を示したデータがあります。
早速データをお示ししましょう。
4歳:29%、6歳:45%、8歳:56%、10歳:62%、12歳:65%、14歳:70%
これを数字だけ見れば、年齢とともに食べられるようになる確率が上がっている。やっぱり、待てば治るんじゃないの!となるのだろうと思います。
これを棒グラフにすると、結構面白いことが分かります(図)。横軸は年齢、縦軸は治った比率を示しています。青い矢印を添えていますが、8から10歳まではそれなりの角度で治っていっていますが、10歳以降は矢印の角度がだいぶ寝てきます。
棒グラフ同士の間に差の数値を書いていますが、最初は10%以上の伸びを持って治っていったものが、後半は3とか6%程度と治り具合が鈍っています。
これを見ると、「小麦アレルギーは待てば待つほど治るのか?」という疑問に関しては、決してそうではないと言えるのではないでしょうか?。タイトルは「待てば治る」と思わせておいて、実は「待っても治らない」ということの方が多いと感じています。
個人的な推察としては、小麦はいろんな食品に含まれますから、除去しているつもりでも、少しは体に入っていて、それで治る方向に作用しているのではないかと考えています。
それと、もう一つ。このデータでは、14歳になっても、小麦アレルギーは7割が治ったのみで、30%の患者が除去を続けています。大雑把に言えば、3分に1は除去が必要であるということです。
小麦は低年齢から食べさせていくと、どんどん食べられるようになるため、これは正直、とても悪いデータだと思っています。重症化すると治りづらいのは確かですが、比率が多過ぎると感じています。
食物アレルギーは、いまだに多くの医師が「待てば治る」とにおわせているかもしれませんが、個人的には「待っても治らない」というか、そんな受け身の姿勢ではなく、「待つ時間も惜しい」、「食べられるようにする努力をすべき」という方が“答え”なのだろうと考えています。
