「日進月歩」と言えば、医学の代名詞と感じている人も少なくないと思います。
確かに、世界では研究者がしのぎを削って、世紀の大発見を目指しています。もちろん、多くの患者さんを救うことのできる研究だったり、世界で初めてとか、世界一の称号が欲したり、巨万の富を得ようとしたり。
それこそ、某国会議員さんが言っていましたが、2位じゃダメなんです。
私の専門の「アレルギー」の分野でも、イギリスの小児科医ラック先生の「皮膚からの刺激で食物アレルギーが悪化し、口からの摂取では寛容に働く」という考え方は素晴らしい発見でした。
それ以来、除去一辺倒だった食物アレルギーの対応も、少しずつ食べさせるという考えが広まってきたと思います。
ところが、食物アレルギーの診療について記載したガイドラインには、いまだに食べて症状を起こしたら向こう1年は除去と書かれていたりします。2020年発刊の最新の手引きにも、少量を食べられないと完全除去との記載もあります。
個人的には、除去が一番してはいけないことだと考えています。その考えに基づき、当院では何とか食べさせる努力を続けています。
日進月歩のはずの医学が、食物アレルギーに関して言えば、少々もたついているように感じています。
もしかしたら、「除去」から180度方向性が変わってしまうので、医療現場が混乱してしまう恐れがあります。十分なエビデンス(科学的根拠)が蓄積するまで待っているのかもしれません。
ただ、現時点で困っている患者さんは多い訳で、“待っている期間”はできるだけ短い方がいいのだろうと思っています。