「花粉ー食物アレルギー症候群」という病気があります。
例えば、スギ花粉症の患者さんがトマトを食べると、口がイガイガしたり、口に違和感を覚えることがあります。ただし、スギ花粉症の患者さんにそう高い確率で見られるものではなさそうです。
スギもトマトも植物です。実は、トマトにスギ花粉と同じような構造のタンパク質が含まれるため、スギ花粉症の患者さんがトマトを食べた際、スギ花粉が攻めてきたと勘違いしてアレルギー反応を起こしてしまいます。
食物アレルギーというと、蕁麻疹や呼吸困難、嘔吐など様々な症状が見られたりしますが、この場合は、口の中のイガイガ感や違和感、唇の腫れなどといった症状が見られます。こういう口という局所に特化した場合を「口腔アレルギー症候群」と言います。
ややこしい病気の名前がふたつ出てきましたが、花粉と似た構造を持つ果物や野菜を食べて症状が出るものが「花粉ー食物アレルギー症候群」、食べ物で口という局所にのみ症状が出るものを「口腔アレルギー症候群」と言います。
ですから、果物や野菜を食べて、口の中がイガイガして、それが花粉症がらみで発症していれば、「花粉ー食物アレルギー症候群」と「口腔アレルギー症候群」と診断されます。
先日、中学生の女の子が5種類ほどの果物を食べると口がイガイガするということで、疑問に思って、当院を受診しました。
上の話がピッタリと当てはまるので、説明したのですが、驚いていました。特に「口腔アレルギー症候群」の概念がかなり浸透してきたと思っていましたが、まだまだ知られていないようです。
最近は患者さんが急増している印象があり、広まって欲しい概念ではあります。