小児科 すこやかアレルギークリニック

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私の考える“親切”
2010年01月06日 更新

私は日頃からこの場でいろいろと書いています。

敢えて言わせて頂きますが、新潟県は小児アレルギーの分野では遅れています(新潟県だけという訳ではないですが…)。全国には専門医によりハイレベルな医療を受けているお子さんが大勢います。専門でない先生の説明を素直に受け入れて「こんなもんで仕方ないんだよなー」と諦めて欲しくないのです。

食物アレルギーの患者さんに「自宅で食べさせてみて」という小児科医は少なくないと思います。ケースバイケースですが、この言葉は患者さんにとって“言ってはいけない言葉”だったりします。

最近はセクシャルハラスメント、パワーハラスメントのほかにドクターハラスメント(ドクハラ)という言葉があるようです。医師による暴言です。語弊があるのかもしれませんが、食べさせても不安で食べさせられないお母さんに対し「自宅で食べさせてみて」というのはドクハラではないかとさえ感じています。

素人である親御さんが、分からなくて困ってかかりつけの小児科医に食べられるかどうかを聞いているのです。それを「自宅で…」というのは責任放棄と言われても仕方ないと思うのです。

ですから、私は新潟県から「自宅で…」という言葉をなくしたいと考えています。「いつになったら実現できることやら」って感じではありますが…(大汗)。

年末年始やお盆の休みになると帰省される親御さんの中に、当院を受診される患者さんがいらっしゃいます。アトピーや食物アレルギーがあり、皆さんそれぞれ地元で治療していますが、経過をみせに受診して下さるのです。

その中に東京の患者さんがいました。アトピーと食物アレルギーのお子さんです。生後5ヶ月頃にアレルギー検査を行ったら、卵とミルク、小麦が陽性であり、これらは離乳食で使わない方がよいと私が説明していたのです。1歳頃に再検査をしましょうとも言っていました。

この年末年始の休みの際にちょうど1歳になったため、アレルギー検査も兼ねて受診して下さいました。地元のかかりつけには、やはり「自宅で食べさせてみて」と言われていたそうです。申し訳ないですが、食物アレルギーの専門家でないのは明らかでしょう。

先日、検査結果を聞きに再診して下さいましたが、卵とミルク、小麦の値は横ばいでした。普通なら「引き続き除去して下さい」という小児科医が多いでしょうが、お子さんが1歳を過ぎて卵と乳製品、小麦を含むすべてを除去し続けるのは、「言うは易し、行うは難し」でしょう。本当にわずかに含まれるものでも症状が誘発されてしまうのなら仕方ありませんが、実際に食べて強い症状を起こした訳ではないので、少なくとも完全除去の必要はないと思われます。しかし、「自宅で食べさせてみて」と言って、万が一強いアレルギー症状が起きてしまったら、誰の責任でしょうか?。

ここで「食物負荷試験」の出番になります。しかし、自宅は東京であり、まさか当院に通って頂く訳にもいきません。しかし、全国の小児科のある施設の90%以上が「食物負荷試験」は行っていないでしょう。医療機関の多い東京とは言え、新潟県よりは「食物負荷試験」をやっているところは多いでしょうが、やっていない病院、医院も多いはずです。

今回の親御さんにアレルギー検査の結果を説明したあと、私を頼って帰省の度に当院を受診してくれる患者さんのために、どうするのか“親切”なんだろうかと考えました。

私は診察を一時中断し、二階に上がりました。それはご自宅の近隣で「食物負荷試験」をやってくれる施設を探すためです。いくつかの医療機関を調べ上げて、お母さんに提示したところ、外来で「食物負荷試験」をやってくれて、実績もある病院を見つけることができました。

まもなく東京のご自宅に帰るということでしたので、その場で「食物負荷試験」依頼の旨の紹介状を書きました。これでひと安心ですが、私はこれで自分の責任を果たしたのではないかと考えています。

自分で言うのも何ですが、ここまでやる小児科医は多くはないと思います。素人の親御さんに「自分で調べて負荷試験をやってもらって下さい」というのもこれまた可哀想な対応だと思っています。こういうケースは多くはないでしょうが、「自宅で食べさせてみて」と言うよりは、数段“親切”な対応ができたと思っています。

食物アレルギーで悩んでいる親御さんの中には「食物負荷試験」の存在自体を知らない方も少なくないでしょう。一般小児科医が「食物負荷試験」をやっている医療機関に患者さんを紹介してくれれば、救われる患者さんは大勢いるはずです。残念ながら、そこまでしてもらっていない患者さんが多いのが現状でしょう。

食物アレルギーに対し、より理解のある小児科医に増えて欲しいと願っていますが、願っているだけでは多分何も変わらないので、変える努力を続けていかなければならないと考えています。