2010年も“辛口”で行こうと思っています(笑)。
超有名店で取材したグルメ番組を見ていると、本当に美味しいんだろうなと思います。腕のあるシェフが手間ひまをかけて、高級食材の味をフルに引き出して初めてすばらしい料理ができるのだろうと考えています。チェーン店の味とは一線を画するものでしょうから、いくら“速い、安い、美味い”をうたっていても、比較対象にならないと思っています。
先月、ある患者さんから転勤になるので紹介状を書いて欲しいと言われました。いつもそう思うのですが「大丈夫かな」と不安になります。何がかというと専門医のいる地域だろうか?と心配になるのです。
他地域から上越に転居されてきたぜんそくのお子さんが、これまで吸入ステロイドを処方されていたのですから、重症だったのでしょう。吸入ステロイドはそう簡単に止める薬ではないはずですが、「これはやらなくていい」とすぐに中止を指示されたそうです。のちに調子を崩し、当院で吸入ステロイドを再開させて頂いています。
こんなこともあるので、自分が手塩にかけて治療してきた患者さんが、引っ越しになることはよくあることですが、その後も継続的にキチンと治療してもらえるかどうかがとても気になるのです。
先の患者さんも、明らかにぜんそくなのに「ぜんそくじゃないけど、ぜんそくっぽい」と曖昧な診断で、適切な継続的治療がなされていませんでした。当院を初診された時点で「肺機能検査」をやってみました。「肺機能検査」は子どもで結果が悪ければ、「一生治らない」と言ってもいいくらいぜんそくが重いことを意味しています。結果は、悪かったでした。
そういう裏付けもありましたから、親御さんには「この子はぜんそくですし、重症な部類に入ります。吸入ステロイドを使った継続的な治療が必要です。」と説明し、ご理解を頂きました。お父さんが結構転勤のある職業のようで、当院では1年程度の治療でしたが、あれだけ繰り返していた発作が、当院に来てからは発作は一度も起きませんでした。
親御さんは、これまで“風邪”などと診断され、そう信じて治療してこられました。結果として、それは正しいとは言えなかったことになります。それまでの対応で、お子さんの気管支は相当のダメージを受けており、当院の治療を継続していても100%治るかどうかは何とも言えませんが、当院に来られなければ限りなく100%に近く大人にぜんそくを持ち越しただろうと思われます。
そのお子さんは、当院にかかる前は診察の待ち時間も短く、症状が減ってくれば薬を中止していたので、ある意味“楽”だったのだろうと思います。しかし、重症なぜんそくな患者さんにはこの対応は、やって欲しくないものです。逆にぜんそくを悪化させてしまうからです。冒頭の料理の話でいけば、“速い”かもしれないが、決して“美味い”ではなく、逆に“まずい”と言えるでしょう。
当院に移ってきてからは、待ち時間は長くなったでしょうが、ぜんそくを大人に持ち越さない可能性が出てきたと言えると思うので、これまでの対応よりは良いと言えるでしょう。
アレルギーは慢性の病気であり、診る医者によって対応がこんなに変わることがあるのです。今回の患者さんは「肺機能検査」でより重症であることが判明した訳ですが、上越でこの検査をやっているのは相当限られます。「当院に来てくれていなければどうなっていただろう?」と思っています。
言いたいことは、医療に“速い、安い、美味い”はないということです。専門医ですから私自身、ぜんそくを見落とさないようにしています。問診が長くなったり、「肺機能検査」に時間を取られることもあります。
とても嫌な言い方になってしまいますが、この子のぜんそくが治らなくても、苦しくなる訳でもありませんし、私自身が困ることはありません。しかし、専門医は皆「絶対に治してやる」という意気込みで診察に当たっていると思います。医師のプライドの問題でしょう。私はどんなに混んでいても、「この子、肺機能が心配だな」と思えば、必ず「肺機能検査」を行っています。そうやって何人も適切な治療にもっていけたと思っています。
私は自分のことを一流シェフだとは思っていませんが、手間ひまをかけて真実を突き止め、適切な治療に持っていこうと努力しているつもりです。いつも言っている通り、ぜんそくを“風邪”と診断されているケースが後を絶ちません。結局は、病気が治らなくて困るのは患者さんですから、専門医が適切な患者教育をしなければならないのです。
2010年もぜんそくに限りませんが、多少時間はかかっても病態を見極め、プライドを持って適切な治療をしていこうと思っています。上越も含め、誰かがこういう専門的な医療をやらなければならないのです。
PS:この場でも触れたことがありますが、先の患者さんは自身のホームページで重症ぜんそくのお子さんに適切な治療をしていなかった医師に対し、「医者辞めろ」と思ったとコメントを寄せていた小児アレルギーの専門医に診て頂くことにしました。学会でもよくお見かけする有名な先生です。私も安心して今後の治療を託すことができます。


