先月の新潟日報の読者投稿欄にこんな記事が出ていました。
妙高市の食物アレルギーの孫を持つ祖父が、食物アレルギーのお子さんにこれまで除去が正しいとされていたアレルギーを起こす食べ物を敢えて食べさせて、そのアレルゲンを体に慣れさせる「経口免疫療法」を取り扱ったNHKの番組をご覧になったそうです。
そして「そしてどうして小児科医はこういう治療をやらないのか?」という疑問を投げかけておられました。そりゃ、食物アレルギーの画期的な治療法です。これまでの小児科医の指導から180度かけ離れた治療なので、祖父の目には魅力的に映ったことでしょう。
妙高市からも食物アレルギーのお子さんは何人も受診されています。おじいちゃんからこういった質問はされていたので、当院かかりつけの患者さんではなさそうです。
ところで、普通の小児科医が外来で患者さんから、いきなり経口免疫療法について聞かれたらビックリすることでしょう。「何それっ?」と、内心そう思うことだと思います。
そもそも食物アレルギーの専門的医療をやっている小児科医自体が少ないので、知らない小児科医も多いことなのです。実は、この治療法はここ数年で言われ出したことで、海外でさかんに研究されてきています。私も2~3年前にこの研究を知った時にはビックリしたものです。それを受け、国内の専門施設でも研究がさかんに行われるようになりました。食物アレルギーの専門医にとって、もっとも興味のある花形の研究なのです。
その証拠に、今回の小児アレルギー学会の経口免疫療法を扱ったシンポジウムは会場から人があふれ、相当に盛況でした。私の聞いてきた講演の中で、もっとも人気のある内容でした。
食物アレルギーの治療は、小児科医に専門的知識があってもなくても「原因食品の除去」という意味では同じでした。それが大きく変わる可能性があるのです。興味のある小児科医にとっては、最新の情報を手に入れるために、“診療どころではない”です。
新潟には食物アレルギーの専門家がほとんどいません。あいにく、今回の学会にも参加者はほとんどいなかったと思います。こういう話は診療を休んででも聞きにきて欲しかったと思います。そうしなければ、新潟県の食物アレルギー事情は改善しないと思っています。祖父の疑問にも的確に答えられないと思います。
その経口免疫療法ですが、妙高市の祖父の期待はまだ叶えられそうにありません。まだまだ“研究段階”の域を出ないのです。方法論が各施設でバラバラであり、適応年齢も定まっていません。現時点では、少量のミルクや小麦製品を摂っただけで強いアレルギー症状を起こす小学生が適当と考えられているようです。
どれだけの量を、どれだけの間隔でどうやって増やしていくか、各専門施設でも設定がバラバラです。自宅でも継続してアレルゲンを食べ続ける必要がありますが、その頻度も定まっていないようです。それにまだ研究段階のなので、予期せぬ強いアレルギー症状を起こしてしまうこともあります。
しかし、私自身も従来の食物アレルギーの対応に限界を感じていたため、非常に魅力を感じているのは確かです。ただ、最初の食べはじめの部分は入院の上で行っており、開業医が行える治療になるかはまだ何とも言えないと思います。
今後も興味を持って、この研究がどうなるかを見極めていきたいと考えています。


